第27回 必要なら、プロマネに逆らっても「助けて!」と叫べ』のコラムにて、PMOはプロジェクトマネジャーの状況を見て、必要であれば上位組織に危険をエスカレーションする必要があると書いた。しかし、現実問題として上位組織の方々は、エスカレーションしたとしても、そうやすやすとは動いてくれない。今回は、どうしたら上位組織が動いてくれるのか、について考えてみたい。

後藤 年成
マネジメントソリューションズ 取締役 PMP


 PMOの主要な役割の一つに、プロジェクト状況の「見える化」があります。見える化した結果、問題が見つかればプロジェクトマネジャーにエスカレーションします。通常は、見える化された状況を基に対応策を考え、プロジェクトマネジャーはそれを実施するための「意思決定」をします。

 ここで問題となってくるのは、プロジェクトマネジャーでは意思決定できない問題が発生した場合です。筆者の判断基準としては、プロジェクトの「前提条件」(プロジェクト関係者の中で確実に存在する、または、実施、順守されると仮定したこと)が崩れた時を目安としています。

 なぜならば、プロジェクトはその前提に従って計画や予算が立てられ、その前提が崩れることを想定していないからです。想定外の出来事に対応するための十分なリソースやコストが確保されていない可能性があり、その場合、プロジェクトマネジャーだけでは意思決定できなくなってしまいます。もちろん、プロジェクトリスク費用としてコストを確保している場合もありますが、前提条件が変更になるような事態は、確保した以上のコストが発生すると考えた方がいいでしょう。

様々なルートを使って上位組織に危険を伝える

 このような場合に必要になってくるのが、PMOとしての「騒ぎ方」です。当然、最初はプロジェクトマネジャーが自分の力で何とか問題を解決しようと試みるでしょう。しかし、それに費やす時間がプロジェクトにとって命取りになる場合も出てきます。

 そこでPMOは、「プロジェクトマネジャー以外の誰がこの問題に対処できるのか?」を考えて、スピード感をもって「プロジェクト内で対処できない問題が発生したこと」を適切な上位組織の担当者にエスカレーションしなければなりません。

 その際、PMOとしては、多少大げさでも「危機感を持ってもらえる」ように騒ぐ方がよいと筆者は考えています。ポイントとしては、その上位組織の意思決定者に様々な所から「この問題は危険だ」という情報が伝わるように仕向けていくことです。そのために様々なルートや手段を使ってPMOが騒いでいく必要があります。裏を返せば、そこで「騒ぐことができない」PMOは、自らの職務を半分放棄しているといっても過言でありません。