域内の関税撤廃ばかりが注目される「TPP」(環太平洋経済連携協定)だが、参加国の間で深刻な対立を招いているのは、実は著作権や特許などの知的財産分野だという。コンテンツとITは米国最大の輸出産業で国力の源。米国政府は知財・情報項目をTPP交渉の重要分野と位置付け、自国に有利なルールを押し付けようとしている─。

 陰謀論めいた始まりとなっているが、ネット社会の進展とともに従来の国内法や条約によるルール作りに限界が訪れていることを分かりやすく解説した良書。従来の枠組みでは変化が激しく複雑化する社会に対応しきれない。ネットの自主ルールといっても米グーグルや米アップル、米フェイスブックのような大手プラットフォーマーの存在感が高まっており、パワーバランスも課題になる。最終的な解決策はみえていないのが実情で、本書は知財問題が「今後少なくとも10年間は世界の論争の種になる」と指摘する。

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「ネットの自由」vs.著作権
福井健策著
光文社発行
777円(税込)