「ゲーミフィケーション」という言葉をご存知だろうか? ここ最近、目にする機会が増えてきたという方も多いのではないだろうか。ただ具体的にこれが何を意味する言葉なのか、何の役に立つのかといったことについてはまだ十分に浸透しているとは言えない状況だ。

 筆者は2年ほど前にゲーミフィケーションという考え方に出会って以来、その可能性に強く魅了されている。ゲーミフィケーションとは、一言で言えば「プレイヤーを楽しませ、没頭させるためにゲームで使われている要素を、ゲーム以外の領域に活用すること」である。

 しかしながらこれは決してわかりやすい概念ではないし、誤解されることも多い。筆者自身も「簡単に説明する」という点ではいつも頭を悩ませている。また、ゲーミフィケーションについて懐疑的な声があるのも事実だ(TechCrunch Japanの記事)。

 ただその多くは本来のゲーミフィケーションの意味が十分に伝わっていないことから生じており、その可能性についてはまだ過小評価されていると感じている。そこで本連載では、ゲーミフィケーションという概念について、それが何なのか、どんなことに使えるのか、あるいはどんなことに使われているのか、どのような将来性があるのか、といったことを中心に解説していく。連載では専門的なことに触れることもあるが、可能な限り平易に説明するよう努めるつもりである。読者諸氏のビジネスにおいて一助となれば幸いだ。

大学の講義に取り上げられるゲーミフィケーション

 さて、第1回となる今回は、現在世の中で起こっているゲーミフィケーションに関連するトピックを紹介していきたい。こうしたテクノロジー産業における新しいコンセプトは、ほぼ常に米国がその発信源となって英語圏諸国に伝播し、おおむね2年程度の遅れで日本にやってくるというトレンドがある。ゲーミフィケーションも例外ではない。そこでまずは国外、特に英語圏での動きをざっと追ってみよう(詳細は別の機会に紹介する)。

 最初にゲーミフィケーションに注目が集まったのは、2011年7月に米国の大手調査会社であるガートナーが発表したテクノロジーハイプサイクルに載ったあたりだ。同時期にガートナーは「2014年までにグローバル2000企業の70%が少なくとも1つ、ゲーミフィケーションに関する取り組みを実施する」と発表(発表資料)。そして、2013年以降のテクノロジーにおける重大予想の1つに「2014年にグローバル1000企業のうち40%がゲーミフィケーションを使って大きな変革を起こす」とのリリースを出している(発表資料)。

 専門のカンファレンスは米国をはじめ、今年はオーストラリア、スペイン、シンガポールなど各国で開催されている。筆者らも2012年6月に東京でカンファレンスを開催した。