Windows 8の新しい機能のうち、特筆すべきもののひとつとして「Windows To Go」がある。これは、USBメモリーなど、本体を起動可能なデバイスにWindowsを格納し、それを使って任意のPCを起動すると、いつもの環境をそこに再現できるというものだ。
モバイルコンピューティングというと、PCそのものを持ち歩くのが普通だ。Ultrabookなどで軽くなっているとはいえ、PCを常に持ち歩くのはなかなか骨が折れる。だが、Windows To Goなら、携帯するのは軽いUSBメモリーだけでよく、適当なPCさえ調達できれば、その場でいつもの環境を起動しいつものアプリケーションを使うことができる。
使うPCは、自宅でプライベートに使っているPCでもいいし、ホテルのビジネスセンターのようなところに設置されたPCでもいい。いわゆるBYOD(私物デバイス活用)がトレンドになりつつある今、私物のPCを業務用とで使うときにも、管理された環境をお膳立てする格好の機能だ。
将来はビジネスホテルから利用できるようになる?
もっとも、ホテルのビジネスセンターのPCが外部デバイスから起動できるようになっているかどうかはわからないという、ちょっとした懸念もある。ただ、Windows To Goのような機能が市民権を得るようになれば、ビジネスホテルの各部屋にドライブレスのPCが設置されるようになっていくかもしれない。実際に試してみると、USB 2.0のメモリーストレージでも、それなりに実用になる。USB3.0ならもっと快適だ。
なお、Windows To Goで起動したPCは、ローカルストレージにドライブ名が割り当てられることはなく、使ったPCのハードディスクになんらかの痕跡を残すわけでもない。また、USBメモリーはBitLockerを使って暗号化しておけるので、万が一、USBメモリーそのものを紛失したり、盗難に遭うようなことがあっても安心だ。
ただし、このWindows To Goという機能は、Windows 8 Enterpriseという企業向けの特定のエディションでしか用意されていない。このため、なかなか普通のユーザーが気軽に使えるというものではないかもしれない。だが、企業内で使うことは検討に値するのではないだろうか。願わくば、マイクロソフトもコンシューマーにもこの機能を解放してほしい。学校などの現場でも便利に使えるはずだからだ。
フリーランスライター