情報処理技術者試験「ITパスポート」の受験者数が、この1年で半減したことが分かった。随時受験可能になった2011年11月から2012年10月末までの受験者数は5万849人。以前は年間で約10万人が受験していた()。

図●「ITパスポート」試験の応募者数、受験者数、合格者数の推移
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 受験者半減の引き金は、試験制度の変更だ。以前は年2回のペーパー試験だったが、受験者層を広げるために2011年11月から全国の試験会場でPCを使って通年受験できるようにした。当時、経済産業省などの試験関係者は「ITを利活用する“パスポート”として、ビジネスパーソンなら誰もが持っている資格にする」と異口同音に語っていた。だが、その端緒で岐路に立たされている。

 なぜ、試験制度が変わったことで受験者が半減したのか。試験を実施している情報処理推進機構(IPA)の須藤義治IT人材育成本部情報処理技術者試験センター企画グループリーダーは、「いつでも受験できるようにしたら、いつまでも受験しない状況になった。以前のような締め切り効果がなくなったことが大きい」とみる。

 もう一つ、「団体申し込みができなくなった影響もある」(須藤グループリーダー)。年2回の定期試験では、企業が一括して申し込んだり、受験結果を人事部門が一元的に把握したりできる。だが、通年受験が可能になったITパスポートでは、個人申し込みだけにした。その結果、企業が研修の一貫で従業員に受験させるケースが減ったようだ。

 この課題については、IPAは2013年2月に対策を打つ。団体申し込みをした企業が、複数の受験者の氏名や受験日、成績など一括して参照できるWebサイトを立ち上げる計画だ。

 だが、それだけで受験者数が元に戻るとは考えにくい。ITベンダーの人材育成コンサルタントは、「いつでも受験できるからすぐに受験しない、という程度の魅力だったということ」と指摘する。「取得するメリットが分かりにくい」という人事担当者の声も少なくない。

 国外ではITを活用したビジネスが次々と生まれている。IT活用力の底上げによる産業強化を図ることが目的ならば、「今、本当に必要なIT活用スキルは何か」から経済産業省やIPAは見直す時期に来ている。