経済産業省と総務省は、行政情報を「オープンデータ」として公開し、本格的な活用に乗り出す。インターネット経由でデータを公開するだけでなく、システムから利用しやすいように共通のAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)の策定を始めた。

 企業はオープンデータを取得することで、自社や他のデータと掛け合わせて分析し、意味のある情報を見いだせるようになる。いわゆるビッグデータ活用が可能になるわけだ()。企業は「本格的に利用できれば、新たなサービスやシステムを創造できる」(NTTデータ幹部)と期待を寄せる。

図●国などが保有する「オープンデータ」の活用手段
総務省や経済産業省が中心となってデータの本格活用を始める
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 経済産業省は2012年12月上旬までに、オープンデータを提供するインターネットサイト「OpenData METI(仮称)」を開設。工業や商業、地質などの統計情報、白書をそれぞれ数種ずつ公開を始める計画だ。当初は申し込みのあった企業などに限定して提供し、2013年1月中には一般にも試用公開する。手順をそろえた共通APIでのデータ提供は、その後になるもようだ。

 総務省は2013年3月までに「公共交通」「地盤」「災害・気象」「青果物・水産物」の4分野で、活用実験を始める。例えば、地盤では国が発注した公共事業の際に取得したボーリングの情報と、各自治体が持つ同情報を共通のAPIで公開。掛け合わせることで、より高い精度の災害危険度マップなどを作成できるようにする。

 諸外国では、米国はオバマ大統領が、2009年の就任直後から「オープンガバメント」を掲げ推進。行政機関に対し、正当な理由がない限りデータを公開するよう求めている。米国以外に、英国やフランス、オーストラリアなど約30カ国が、政府のオープンデータを公開するポータルサイトを用意している。

 一方の日本は2012年7月にIT戦略本部が「電子行政オープンデータ戦略」を策定した。政府横断の統合ポータルを検討する「実務者会議」は「速やかに設置」と明記されたものの、「2012年12月中には開催したい」(経産省、総務省)という段階。欧米などに2~3年出遅れており、国や企業の競争力を左右する利活用で差をつけられてしまう事態を避ける必要がある。