「パワハラ」や「セクハラ」は、管理職が原因となって起こるように思われがちだ。だが現実は必ずしもそうではない。

 例えば筆者は、会議の席上、多くの社員が見守る中で、何人かの社員がチームになって、上司の発言の揚げ足とりを繰り返しているのを、注意したことがある。これもれっきとしたパワーハラスメントだと思う。

 また女子社員たちが、上司の頭髪の真偽を話題にして笑っているのも、許されざるセクハラである。

 ただでさえ、職場のストレスの最大の原因は管理職にあると思われがちであり、そのこと自体が管理職のメンタル不調を増やす原因の1つにもなっている。

 経験的に言うと、気遣う人間関係が限定的となる経営層のマネジャーはあまり問題ないが、上司と部下との板挟みになるミドルマネジャー、中間管理職が最も大変だ。家族がいて、仲が円満であれば不調は緩和されるが、逆に促進要因となることすらある。

 さらに、ソフトウエア開発の現場では、大きなメンタル不調の促進要因が2つある。

促進要因その1:プレーイングマネジャー化

 第1の問題は、それは管理職に組織的な役割が集中しがちなことだ。プレーイングマネジャーと呼ばれる、プレーヤーと管理職の兼務をするメンバーが増えている。それゆえに高い処理能力が要求されている。

 しかもソフトウエア開発の現場では、ここ十数年の間にソフトウエアの開発規模が急激に拡大し、開発現場ごとにプロジェクトマネジャー(PM)が不可欠となってきた。このPMの主な作業は、ITproの読者ならご存じの方が多いと思うので、詳しくは述べないが、開発方針を明示し、リスクをヘッジし、プロジェクトメンバーの作業振り分けや、進捗を把握し、プロジェクトを統括するなどである。

 問題は多くの開発現場で、このPMを管理職が兼務していることである。PMが高度な専門職と認められ、管理職とは異なるスキルを必要されるようになった現在でも、社内の人材不足や、人事制度、賃金規定の未整備などの理由によって、兼務者は多い。

 確かに、昔の小さなプロジェクトであれば、さほどの高度なプロジェクト管理スキルは求められなかったし、管理職のスキルと重なるところも多かった。

 しかし、昨今の大型開発のPMは、開発プロセスの理解に加えて、技術動向の知識や、リスク管理/品質管理の手法も身につけなければならない。そのうえ、メンバーのモチベーションを上げて、リーダーシップを発揮することを求められる。

 一方で、課長や係長として、上司からの指示を遂行し、部下からの要望にも対応しなければならない。まさにストレスの渦中で生活しているようなものである。