企業情報システムの開発で、成否を分ける大きな要因の一つが要件定義である。企業の業務の多くは複雑であり、かつユーザーはシステムに過大ともいえる期待を持っている。そのため、過不足のない要件を定義してユーザーの合意を得ることは容易ではない。結果として、開発時に大きな手戻りが発生したり、ユーザーの狙いとかけ離れたシステムが出来上がったりしてしまう。

 本書は、そうした問題に直面しないための、要件定義のノウハウを解説。前半は、開発の失敗事例とその原因分析に多くのページを割いている。これを読むと、後半で解説する要件定義のテクニックの重要性や勘所を理解しやすいだろう。また、属人的になりがちな要件定義の手順を七つのステップに整理して説明してあり、作業の全体像をつかみやすい。リーダーの個性別に、要件定義の進め方の特徴が解説してあるのも面白い。

プロフェッショナル要件定義の教科書

プロフェッショナル要件定義の教科書
桐谷 恵介/今村 信一/京極 卓也/石坂 博之著
中央経済社発行
2520円(税込)