ソフトバンクは2012年10月15日、米携帯電話3位のスプリント・ネクステルを買収すると発表した(写真1)。買収額は201億ドル(1兆5709億円)。米規制当局の承認を経て2013年半ばまでに70%の株式を取得する予定だ。約1兆7500億円を投じたボーダフォン日本法人の買収から6年余り。さらなる成長への道を探り、大勝負に出た。

写真1●スプリント・ネクステル買収を発表するソフトバンクの孫正義社長(左)とスプリント・ネクステルのダン・ヘッセCEO(右)
写真1●スプリント・ネクステル買収を発表するソフトバンクの孫正義社長(左)とスプリント・ネクステルのダン・ヘッセCEO(右)
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 スプリント・ネクステルの契約者数は6月末時点で5600万件の米国3位。ただ1位のAT&T(契約者数は1億520万件)、2位のベライゾン・ワイヤレス(同9420万件)に大きく離された3位で、業績も5期連続の最終赤字と伸び悩んでいる。

 とはいえ、それでひるむ孫正義社長ではない。「ボーダフォン日本法人を買収したときも現在のスプリント・ネクステルと似たような状況だった。資金力のある上位2社が寡占している状況は我々にとってチャンス。日本で実現したことをもう一度再現する」と巻き返しに自信を見せる(図1)。

図1●ソフトバンクの連結売上高、経常損益の推移と大きな出来事
図1●ソフトバンクの連結売上高、経常損益の推移と大きな出来事
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 孫社長はその裏付けとして、日本テレコム、ボーダフォン日本法人、ウィルコムの3社をV字回復させた実績を挙げるが、最大の拠り所はスプリント・ネクステルが既に再建を進めている点。スプリント・ネクステルは2008~2009年に契約者の純減が続いていたが、2010年から純増に転換し、ARPU(契約当たり月間平均収入)も伸びている。昨年10月にiPhoneの販売を始めたほか、今年7月には1.9GHz帯でFDD方式の「4G LTE」も開始した。

 さらに今回の買収資金のうち、6割は既存株主に還元するが、残りの4割はスプリント・ネクステルの増資に使う。増資した分はネットワーク設備の強化や戦略的投資に回せる。2013年末までに全国展開するLTEに設備投資はかかるが、2014年以降は利益成長フェーズに入るというもくろみだ。