楽天は2013年中に、ソフト開発を短期間で繰り返す「アジャイル開発手法」に基づいて楽天グループ共通のシステム開発体制を整備する()。同手法に基づく開発プロジェクトを担う人材育成に向け、楽天はNTTデータと“異業種タッグ”を組む。

図●楽天がグローバル展開を進めるシステム開発体制の強化策
アジャイル開発手法を採用、2013年中に全拠点・全サービスに適用する
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 楽天は、急な仕様変更や機能追加に対応しやすいといったアジャイル開発の利点を生かして、「楽天市場」など自社サービスのグローバル対応を一気に進める。

 すでに海外グループ企業の一部がアジャイル手法を先行導入しているほか、日本でも楽天市場の開発チームが2010年ごろから段階的に導入。豪アトラシアンのプロジェクト管理ソフト「JIRA」などを使った開発環境の整備やエンジニア向けの研修を進めてきた。

 アジャイル手法の全面採用で、グループ全体で3000人規模のエンジニアが開発リソースやノウハウを共有しやすくなる。「海外のノウハウを日本に取り入れたり、海外プロジェクトを日本のエンジニアが支援したりできる体制を整備していく」と、徳川智之 開発アーキテクチャ部開発環境・プロセス課課長は話す。

 今回採用するアジャイル開発手法は「スクラム」。プロジェクト体制を中心に規定するシンプルな手法である。原則として国内外の楽天グループ企業が提供する全てのサービスの開発に適用する。

 NTTデータと共同で目指すのは業務部門側の代表である「プロダクトオーナー」の育成だ。プロダクトオーナーはスクラムによる開発でユーザー側の仕様を決定する権限を持ち、開発チームとの仕様調整の窓口となる。

 NTTデータはここ数年でスクラムに基づく企業向けシステムの開発体制を整備し、プロジェクト管理などのノウハウを蓄積してきた。2012年5月からは、アジャイル開発人材を3年で1000人育成するプログラムを展開中だ。楽天はアジャイル開発を全社展開する際に、NTTデータのこれらのノウハウを生かせるとみている。

 楽天とNTTデータは、プロダクトオーナーの候補となる人材が開発チームとの協議に必要なスキルを効率的に習得できるようにする。研修用プログラムを共同で開発し、2012年12月に十数人ずつを出して合同研修を開始する。2012年度は2社で計60人、2013年度には計180人に研修を実施する計画だ。