富士通は2012年11月1日、アウトソーシングの受託子会社「ITマネジメントパートナーズ」を設立した。予算管理やベンダーマネジメントなどの情報システム管理業務を受託し、サービスとして顧客企業に提供する(図)。新会社は富士通が全額出資し、複数企業の情報システム部門からアウトソーシングを受託する。
最大の狙いは、アウトソーシングビジネスの裾野拡大だ。
これまで富士通が顧客企業のシステム管理業務を請け負う場合、共同出資でシステム子会社を設立する例が多かった。子会社を共同で設立するには、ある程度の事業規模が必要だ。「コスト面で割が合うかどうかの分岐点は、システム担当者が30人程度、年間のIT投資額が10億円程度だ」と新会社の上垣泰洋社長は分析する。
そこで今回は、複数企業から業務を受託する「マルチテナント型」のモデルを構築したことで、安価にサービスを提供できるようにした。「年間IT投資が3億円程度の中堅企業からも業務を受託できる」と上垣社長は意気込む。
設立の背景にあるのは、「ITがビジネスの差異化要因になると気付いた中堅企業が、企画力強化を意識し始めた」(上垣社長)ことだ。本来なら、システム管理業務は顧客企業自身が行う領域だ。しかしそうした領域をも外部に切り出して、戦略策定や企画に集中したいというニーズが増えているという。新会社はその「受け皿」になると、上垣社長はみる。
第一号ユーザーとして、河合塾が2013年4月から新会社を活用する。受託業務の範囲は今後両社で詰めていくが、システム企画部門は河合塾本体に残しつつ、それ以外の業務を新会社が受託する方向で交渉を進めているもようだ。河合塾の担当者を出向者として受け入れ、富士通出身の技術者が運用ノウハウなどを提供することで人材育成も支援する。
「居酒屋チェーンやサービス業など、既に複数の中堅企業から相談を受けている。年間5~10件ずつ受託案件を増やしていきたい」と上垣社長は明かす。大型案件に力点を置く日本IBMなどとは一線を画し、より多くの企業を対象とすることでビジネスを伸ばす考えだ。