「どんな車でも作れますよ」
そう豪語した中国の老板(経営者)は、私をとある自動車工場に連れて行った。自動車工場と言っても街の郊外にある工場だ。日本にあるような大手企業の巨大自動車工場ではない。1000坪ぐらいの敷地に3棟の工場母屋がある程度である。「コウジョウ」というより「コウバ」と言った感じだ。

 ひょっとしたら通訳が「部品メーカー」を「車体メーカー」と訳し間違えたのではないかと思っていたが、確かにそこは自動車車体を製造しているメーカーだった。その証拠に、所狭しと部品が並べられている。半完成品の扉、ハンドル、タイヤ、圧巻だったのは、ある区画にびっしりと並べられたエンジンだった。

 「このエンジンは自社製です」
そう説明するのは、ここの工場長。確かに日本製ではなさそうだ。多くの日本の自動車工場を見学してきたので、それくらいなら分かる。日本車に付いている様なエンジンではなく、農耕機についているような簡素なエンジンなのだ。現場では器用にそのエンジンを組み立てていた。組み立てラインなどはない。エンジンと車を持ち上げるクレーンが1台あるだけで、それを器用に使って組み立てているのである。