GoogleからWindows 8、スマートフォン、Facebook、各種ゲーム機などなど、世界中で知られている究極のイノベーションには究極のUXが伴っている。究極のUXがあったからイノベーションが生まれたと言っても過言ではないだろう。その他にも優れたUXに共通な特徴を挙げてみよう。

優れたUXは、物凄くシンプル。
優れたUXは、ユーザーの時間を短縮する。
優れたUXは、価値と価値を結び付ける。(異なる価値の融合)
優れたUXは、新しい風景を創る。
優れたUXは、コストを削減する。

 裏を返せば、優れたUXが生まれる環境は、上記の逆環境にあるのではないだろうか。

かなり複雑な商品、サービス。
かなり時間のかかる商品、サービス。
かなり価値が変わらないままの商品、サービス。
かなり見慣れた、あるいは廃れた風景の商品、サービス。
かなりコストのかかる商品、サービス。

 UXは何も表面的なデザインや機能だけではなく、それを使う人を含めた風景を言う。あるサービスにおいてスマートフォンのアプリでコンテンツをダウンロードしたとしよう。それ程大きなデータ量でないコンテンツなのにダウンロード時間が長かったら、ユーザーは「チッ...」と舌打ちをし、シカメッ面になるだろう。ダウンロード時間を少なくする技術力はあってしかるべきであり、それ以前にユーザーをおもんばかる気持ちがあってこそ初めてその技術が活きるのである。

 おもてなしのITとは、良く言ったもので、技術の前に配慮があるべきなのだ。テクノロジーは生活者のシモベであると以前に述べたが、テクノロジーを暴走させずに生活者のシモベたらしめているのは紛れもない生活者そのもの。つまり私たち自身なのである。ましてやマルチスクリーンの時代とあっては、1社ですべてのスクリーンを賄うわけにはいかない。どんなにテクノロジーが進化しようとも生活者の1人1人が互いにおもんばかって生活していくように、企業も同業者だけでなく異業種にも気を配りながら新しい商品やサービスを互いに開発していく時代になるだろう。そして優れたUXは、人々だけでなく、企業と企業を、人々と企業を繋ぐことに貢献していくに違いない。

水川 毅(みずかわ たけし)
電通 第4CRP局プランニング・ディレクター
東京大学大学院学際情報学府卒。1990年電通入社以来コピーライター、CMプランナーを経て、1998年以降インタラクティブ領域のビジネスに従事。Webの制作ディレクターを経て2005年以降は新規事業開発に携わる。スマートフォンアプリの開発から、プラットフォーム開発、企業戦略まで業務範囲は広い。