本特集では、ベトナムにおけるオフショア開発最新事情を紹介する。現地に拠点を置いて活動する3社の取り組みから見えてくるベトナム開発環境や現地の開発者リクルーティング事情などを報告する。連載第1回の本稿では、オフショア開発を取り巻くベトナム経済の近況を紹介する。

写真1●バイクがひっきりなしに流れるホーチミンシティの市街
[画像のクリックで拡大表示]

 今回取材に訪れたのは、ベトナム南部に位置するホーチミンシティ。通勤や通学など市民の足の中心は小型バイクであり、主要道では早朝から深夜まで間断なくバイクの隊列が流れていく。アジアの新興国にいることを実感する光景である(写真1)。

 同国の活力の源泉は、国民が圧倒的に若いことだ。平均年齢は30歳前後とされており、45歳程度とされる日本とは15歳ほどの開きがある。

 そんなベトナムの今後数年を展望したときに期待が高まっているのが、国内需要(内需)の拡大である。現在、ベトナムの名目GDP(国民総生産)は1377億ドルであり、日本の約40分の1ほどにすぎない。しかし、その伸びは著しく、過去4年間をみると倍増している。これから数年においても、さらなる拡大が期待されているのである。

写真2●ホーチミン日本商工会の西田昌弘氏
[画像のクリックで拡大表示]

 その期待感を象徴する動きが「日本からの大手流通業の進出」(ホーチミン日本商工会・事務局長の西田昌弘氏=写真2)という。2014年にはイオンがホーチミンシティ周辺にショッピングセンター2店舗を、2015年には高島屋がホーチミンシティ中心部に百貨店施設をそれぞれ開業することが決まっている(発表資料1発表資料2)。これらは、ベトナムにおいて高額所得者の増加だけでなく、中間所得層の収入底上げも見込んだ動きといえる。

 このほか「若年層を中心に、格安航空会社(LCC)を使った国外旅行やクレジットカードによるオンラインショッピングの利用も増えている」(現地メディアAction.vn編集者のNgan Sau氏)とされており、消費のボリュームゾーンとなる若年層をターゲットとしたサービスの一層の拡大が見込まれているという。