ビッグデータを解析し、経営戦略や新サービスに結びつけたいというニーズが高まっている。こうしたニーズに応えるため、各ITベンダーはビッグデータを支えるデータ処理基盤を用意し、様々なソリューションを提供している。ただし、基盤が整ったとしても、ユーザーがビッグデータを活用するには、データから価値を見いだす必要がある。

 こうした背景から、日立製作所は2012年4月、ビッグデータの利活用に関する専門家「データ・アナリティクス・マイスター」を結集した専任組織「スマート・ビジネス・イノベーション・ラボ」を新設した。この新設組織の役割やビッグデータのトレンドを、日立製作所 情報・通信システム社 スマート情報システム統括本部 副統括本部長の安田誠氏に聞いた。

(聞き手は田島 篤=ITpro副編集長、構成は藤本 京子=ITpro)

日立のビッグデータへの取り組みの現状と、ユーザーがビッグデータを活用するにあたって現在どういったフェーズにいるのかを教えてほしい。

 日立はITベンダーとしてデータ処理基盤の構築に以前から長く取り組んでおり、実績や事例もある。一方、多くのユーザーは、データ処理基盤を通じて蓄積可能なデータから、経営や事業に役立つ「価値」を生み出したいと考えている。そこで日立は、2012年4月にスマート・ビジネス・イノベーション・ラボを設立した。

様々なデータから価値を引き出す役目を担う

安田 誠(やすだ まこと)氏
日立製作所 情報・通信システム社 スマート情報システム統括本部 副統括本部長 安田 誠氏
(写真:都築 雅人)

 企業には様々なデータが存在している。しかしながら、多くの企業はそのデータを使っていなかったり、捨ててしまったりしている。現在は皆、そこから価値が生み出せるのではないかと考え始めている段階だ。そこで、価値を生み出す取り組みを顧客と共に検討し、ITベンダーとして技術の使われ方や効果を提案するために新組織を立ち上げた。

 スマート・ビジネス・イノベーション・ラボには、データ・アナリティクス・マイスターというビッグデータの専門家が30~40人ほどいる。マイスターは、ビジネスとデータの関係性を見いだし、それをシステム化することでどのようなメリットがあるのかを評価し提案する役目を担っている。

 今年6月には、ビッグデータで新たな価値を創出するためのサービス「データ・アナリティクス・マイスターサービス」を開始した。サービス開始以降、すでに150件ほどの問い合わせをいただいている。多くは問い合わせのみだが、約30件は継続して対応を検討中だ。また検討の結果、データを実際に見せてもらい、トライアルまで進んでいるケースが約10件、そして契約に結びついているのも2件ある。もちろん、データ処理基盤の案件はほかにも多くあるが、マイスターがアプローチした案件だけで半年以内にこれだけの結果が出ている。

マイスターが提案活動をする対象はどのような部門になるのか。やはりIT部門か、それとも経営層なのか、またはマーケティング部門や現場に立つような部署なのか。

 すべての部門が対象といえる。具体的なニーズとしては、例えば顧客を多く抱える企業で、契約が切れる際に離反分析したいというケース、また商品を取り扱う企業から、事前にトレンドを把握できないかといったリクエストもある。さらには、価格付けの際にアクティビティと結果の相関性を分析したいというケースもある。