企業内外に存在する多種多様で膨大なデータ資産の生かし方が事業の優劣を決め、企業の競争力を左右する――。ビッグデータ活用が注目を集めるなか、企業はどのような姿勢で取り組めば成果につなげることができるのか。ビッグデータ活用を成功に導く勘所を、識者や先進ユーザー企業、ベンダー企業へのインタビューを基に紹介する。
様々な販売施策で膨大なPOS(販売時点情報管理)データを活用しているのが、ボランタリーチェーンを展開する全日本食品である。同社を率いる齋藤充弘社長に、データ活用をどのように企業経営に役立てているのかを聞いた。
「これからの小売業は、データ活用に優れたところが勝ち残っていくことになるでしょう」。全日本食品の齋藤充弘社長は、このように強調する。同社は、約1800の加盟店と提携チェーンで構成する日本最大のボランタリーチェーン「全日食チェーン」の運営会社。大手のスーパーやコンビニなどに対応するために、古くから様々な情報化に取り組んでいる。
例えば、2010年9月に稼働した販売促進システム「ZFSP」。購買履歴に応じて、「顧客別チラシ」を提供するシステムである。その顧客がいつも購入している商品を店頭価格よりも安くしている点が大きな特徴である。
このシステムを含めて、同社は工夫を凝らした販売施策で膨大なPOSデータを駆使している。POSデータを分析する専門部署を設置するほど、データ活用を重要な役割に位置づけている。具体的には、どのように企業経営に役立てているのか。
「小売業は今、大きな転換期に立っていると考えています。一言で表現すると、『曖昧な世界の競争が、データに裏打ちされた競争』に変わりつつあるのです。
これまでの小売業は、ヒト頼りという側面が大きかった。優秀なMD(マーチャンダイザー)がいれば優秀な店になって、MDがダメだと店もダメになる。MDの勘と経験に頼っていたのが現実です。小売業の大半は、いまだに一部の優秀な人材に頼っているのが実情でしょう」