総務省の現役官僚によるオバマ政権の情報通信政策レポート。大著ながら文章に“霞ヶ関くささ”がなく読みやすい。米国特有の事情を踏まえつつ、日本の政策と比較することでオバマ政権の狙いを浮き彫りにしている。

 政策立案の過程も詳細に記述している点が特徴だ。本当に力を入れたかったポイント、妥協せざるを得なかったポイントを可視化している。例えば、様々な政策を横断して「全国民が利用できるブロードバンドの整備」と「ネットワークのオープン化」にこだわったことが分かる。一方で、通信速度やオープン化の急進は、経済情勢や政局から妥協せざるを得なくなった。

 米国では11月に大統領選挙がある。本書はオバマ政権の動きを中心に据えながら、対抗軸である共和党の政策にも触れている。大統領選後、米国が情報通信分野でどう動くのか、ここまでの経緯を詳細に知るためにも本書はうってつけだ。

インターネットに自由はあるか

インターネットに自由はあるか
藤野克著
中央経済社発行
4200円(税込)