ディスクを回すスピンドル・モータも最近ではトラブルの種である。ここにきて採用が広がってきた動圧軸受けを用いるスピンドル・モータに起因する故障が幾つかある。
記録媒体を高速で回転させるスピンドル・モータの動圧軸受けには,完全充填型と部分充填型の2種類がある注)。このうち部分充填型は,完全充填型に比べて安価だが障害が発生しやすいので特に注意が必要だ。
部分充填型では潤滑油の充填時に異物が混入する恐れがある。潤滑油と空気が接触する部分が多いため,気泡の混入や潤滑油が漏れる可能性も高い。このほかにも,HDDを長時間連続で使用して高温になった場合に,潤滑油中に気泡が発生したり,潤滑油が偏って回転軸が偏心したりして障害を引き起こす例もある(図)。
部分充填型の動圧軸受けモータによる障害は,HDDの回転が止まって潤滑油が元の状態に戻ってから再び動作させると正常に動作することがあるため,原因を発見しにくい。記録媒体やヘッドにキズや異物が付くわけではないので,HDDを分解しても,にわかには障害原因が分からない。間欠的で再現性の低い障害を繰り返した後に,突然全く動作しなくなるから厄介である。
ある依頼主が,故障が発生したHDDをHDDメーカーに送付したところ,HDDメーカーの調査でなかなか再現しなかったことから,我々に解析を依頼してきた例がある。事務用機器でかなり頻繁に故障が発生していたという。解析の結果,部分充填型動圧軸受けを用いたスピンドル・モータの回転軸の偏心が原因であることが分かった。最終的に機器メーカーは,HDDを1日に1度止めるようにソフトウエアを変更して,偏心を防ぐことにしたようだ。