製造時の異物の混入を確認したのは,ある民生機器のHDDの故障事例だった。この機器の3%程度に故障が発生したという。この事例では人の唾液や汗,皮膚の組織などが製造時に混入したとみられる。
HDD内部で見つかった異物をエネルギー分散型X線分析装置(EDX:energy dispersive X-ray spectroscopy)で成分分析すれば,HDDの使用時に発生した異物か,組み立て時に混入した異物かを判断することが可能である。HDDの部品に含まれていないはずの成分であれば,組み立て時に混入した可能性が高い(図)。
異物の混入のほかに,組み立て時にHDDの部品を壊したとみられる例も少なくない。過去の事例では,スライダの角が大きく欠けているものまであった。HDD内部を丹念に探したが,欠けた部分は見つからなかった。
HDDはクリーン・ルーム内で組み立てているが,人手に頼る場合は作業者から異物が混入しやすくなる。最近では製造コスト低減のために人件費の安い国で手作業による製造が増えてきた。機器メーカーは,HDDの製造拠点の場所や環境などにも気を配る必要がありそうだ。