ソーシャルクラウドと災害対策

 ソーシャルクラウドの目的の一つに災害対策が挙げられる。東日本大震災における情報消失など、従来の情報システムの災害に対する脆弱性を補うことは、特に公共分野にとって重要である。

 各種自然災害における被害想定は、内閣府中央防災会議などで見直しが進められている途上だが、「ソーシャルクラウド調査報告書」(以下、調査報告書)では、首都直下型地震、東日本大震災、台風、パンデミック(新型インフルエンザ)の4種類について検討を行った。4種類の災害の被害想定などを表1に示す。平成23年度時点での被害想定とソーシャルクラウドの関連では、次の点が重要だと考えた。

  • ソーシャルクラウドの観点で考えると、ライフラインの電力、通信の復旧日数などが重要である。
  • 利用者視点で考えると、帰宅難民者をどうするかを考える、という視点が重要になる。
  • 発災時には「通信が細くなる」「帯域はたいしたことはないがコネクション数が多数になる」という特徴がある。
  • 死者数に加えて負傷者数も重要。家族の怪我に対して病院を探すなど。救急については直接の対象ではないが、救急とその他病院などの情報をマッチングする共通インフラをソーシャルクラウドが担うだろう。
  • 建物の倒壊数も重要。サーバーが壊れていなくても建物に立ち入れなくて稼働できないというケースが考えられる。
  • 被害想定のうち、人数や規模などがソーシャルクラウドが扱うべきデータ量・スケーラビリティなどの限界値を定めることになる。特に被害想定の広がりと深刻度が重要である。
表1●災害の種類と被害想定について
表1●災害の種類と被害想定について
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