今回(本連載)は,我々がHDDの評価や障害解析ビジネスで経験してきた事例を中心に,HDDの障害が発生する原因について議論する。原因の中にはHDDメーカーの 不手際など,機器メーカーが用心しても防げないものもある。こうした場合も原因の所在を明らかにすることは,HDDメーカー相手の交渉を進める上で有利な 材料になるだろう注)。以下の事例がHDDを利用した機器の開発や保守に役立てば幸いである。なお,どの例でも我々の解析の後,機器メーカーやHDD メーカーがどう対応したのかは知らされていない。

注)我々の調査結果は,機器メーカーがHDDの障害への対策を立てる指針にするほか,HDDメーカーに改善を求めるための資料にもなっているようだ。我々はHDDの故障解析や信頼性評価試験のほかに,一般的な化学分析や液晶パネルの寿命評価,プリント配線基板の耐久試験,光ディスク装置の故障解析なども手掛けている。

 以下では(1)HDD内の異物による故障,(2)記録媒体の潤滑剤の劣化による故障,(3)振動や衝撃による故障,(4)スピンドル・モータに起因する故障,(5)LSIや ファームウエアに関連する故障に分けて,事例を順番に紹介する()。これらの障害は我々が過去の解析の中で経験してきたものであり,HDDの障害のすべてではない。

ハード・ディスク装置(HDD)を構成する部品は繊細で,異物や衝撃,温度,湿度の影響を受けやすい。異物が発生したり衝撃が加わったりすることで,HDDの動作は不安定になる。
ハード・ディスク装置(HDD)を構成する部品は繊細で,異物や衝撃,温度,湿度の影響を受けやすい。異物が発生したり衝撃が加わったりすることで,HDDの動作は不安定になる。
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 ただし,それぞれの現象は複数の機器メーカー,複数のHDDメーカーで確認している。なお,それぞれの問題の起こりやすさは,HDDメー カーや機種によって差があるようだ。機器メーカーは,同様な仕様の製品であっても,障害の出やすさに差がある可能性に留意してHDDを選定することが重要である。