OrchestratorによるITプロセス自動化

 マイクロソフトは2009年、カナダのOpalis Software社を買収し、ITプロセスの自動化ツールであるOpalisを取得、System Center 2012ではOrchestratorという名前で提供している。

 ここで言うITプロセスとは、「仮想マシンを作成し、必要なエージェントをインストールする」や「ユーザーのパスワードをリセットし、電子メールで新しいパスワードを知らせる」などの繰り返し発生する定常的なIT作業である。ITプロセスの自動化は、ITPA(IT Process Automation)またはRBA(Run Book Automation)とも呼ばれる。Orchestratorでは、ITプロセスの自動化により管理者の負荷を減らすだけでなく、手作業におけるヒューマンエラーを削減し、作業時間も短縮する。

 なお、OrchestratorはSystem Center 2012のコンポーネントの中で唯一、日本語化されていない。日本語化は次バージョン以降で予定されている。日本語化されてはいないが、日本語環境の動作は保証されている。

 Orchestratorでは、実行する一連のITプロセスの流れを「Runbook」と呼んでいる。Runbookの作成において、スクリプトの記述は一切必要ない。図1で示すようにRunbook Designerを使用して、画面右の「Activity」と呼ばれるアイコンをキャンバスにドラッグ&ドロップし、アイコン間を「Link」と呼ばれる矢印で接続すればRunbookが完成する。

図5●Runbook DesignerによるRunbookの作成例。このRunbookはユーザーアカウントのロックの解除とパスワードのリセットを行うもの
図1●Runbook DesignerによるRunbookの作成例。このRunbookはユーザーアカウントのロックの解除とパスワードのリセットを行うもの
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 図5はユーザーアカウントのパスワードをリセットする簡単なRunbookの例である。Activityは左から順にLinkに従って実行される。一番左の[Initialize Data]は、Runbookの実行時に必要なパラメーターの入力作業を示す。この例では、ユーザー名を入力することになる。次の[Get User]では、入力したユーザー名からユーザーアカウントの情報を収集し、もしユーザーアカウントがロックされていたら[Unlock User]でユーザーアカウントのロックを解除する。そして、最後の[Rest User Password]でパスワードをリセットする。Runbook Designerで開発したRunbookは、Runbook Testerでテスト実行して動作を検証する。

 Runbookを実行するタイミングとしては、決められたスケジュールでの実行、ユーザーによるオンデマンドでの実行、あらかじめ設定した条件によるトリガーでの実行がある。

 Orchestratorには、表1のカテゴリーに分類された74個のActivityが用意され、後から追加することもできる。Activityを追加するには、Orchestratorに統合パック(Integration Pack)をインポートする。統合パックはOperations Managerの管理パックと同様にマイクロソフトおよびサードパーティーから提供されている。もちろん、独自の統合パックを開発することも可能だ。

表1●Orchestrator標準のActivity
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表2●Orchestrator標準のActivity

 現在、マイクロソフトのWebサイトでは、System Center 2012の統合パックが公開されている(表2)。これらの統合パックをOrchestratorにインポートすることで、プライベートクラウドの管理タスクの大半を自動化できるようになっている。このほかにもマイクロソフトからはActive DirectoryやExchange Serverの統合パックが公開されている。

表2●System Center 2012向け統合パックのActivity
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表3●System Center 2012向け統合パックのActivity