今日、多くの仮想マシンはパフォーマンス向上のため、iSCSIやファイバーチャネルなどのSANストレージ上に格納されている。しかし、仮想マシンをSANストレージへ格納するには、論理ユニットの作成など、SANストレージ側の管理ツールでいくつかの操作を行う必要がある。これに対して新しいVMMは、VMMコンソールから直接、SANストレージをリモート操作できるようになっている。
VMMが操作可能なSANストレージは、ストレージ管理の標準規格であるSMI-S(Storage Management Initiative - Specification)に準拠したものである。VMMでは、SMI-Sプロトコルを使用して、SMI-Sプロバイダー経由でSANストレージを検出し、論理ユニットを作成/削除したり、ホストへ割り当てたりできる。また、クローンまたはスナップショットに対応したSANストレージであれば、新しい仮想マシンを作成する際、仮想ハードディスクを論理ユニットの複製機能で素早くコピーし、瞬時に仮想マシンを作成することもできるようになっている。
N階層のサービスを自動展開
VMMのサービス管理におけるサービスとは、一緒に動作する仮想マシンのグループを指す。VMMのサービス管理では、あらかじめ複数のVMテンプレートを含んだ「サービステンプレート」を準備しておき、サービステンプレートからサービスを展開することで、一度に複数の仮想マシンを作成し、構成する。
例えば、WebサーバーとデータベースサーバーとアプリケーションサーバーのVMテンプレートをまとめて、3階層のWebサービステンプレートとして準備し、素早く展開できる。
サービステンプレートは、サービステンプレートデザイナーと呼ばれるGUIツールで作成する(図1)。サービステンプレートの作成は、サービステンプレートデザイナーで既存のVMテンプレートをキャンバスにドラッグ&ドロップするだけでよい。また、サービステンプレートにネットワークやロードバランサーの設定を追加でき、サービスの展開に合わせて、これらも自動構成することができる。
サービス管理は、単純にサービスを展開するだけではない。展開したサービスをスケールアウトしたり、更新したりすることにも対応する。サービスのスケールアウトは、例えば負荷に合わせて仮想マシンを各層に追加できる。もちろん、追加した仮想マシンに合わせて、ネットワークやロードバランサーも自動的に構成される。サービスを更新するときは、各層のすべての仮想マシンへ、一括して変更を適用可能である。例えば、仮想マシンへのディスクの追加やメモリーサイズの変更、アプリケーションの追加などを一括して行える。
アプリ配布によるPaaSの提供
サービスの展開では、仮想マシンにアプリケーションを配布することもできる。つまり、クラウドサービスの1つであるPaaS(Platform as a Service)がVMMで提供可能となる。配布可能なアプリケーションは次の3種類である。
(1)データ層アプリケーション(DAC)
SQL Serverのユーザーデータベースを配布する機能。データ層アプリケーションにより、テーブルやビューやインスタンスオブジェクトなどSQL Serverのユーザーデータベースに関連付けられたオブジェクトを容易に配布できる。
(2)Webアプリケーション
IISの拡張機能であるIIS Web 配置によるもので、容易にWebサイトおよびWebアプリケーションを配布することができる。
(3)仮想アプリケーション
VMMの新機能であるServer App-Vを利用したもの。仮想アプリケーションでは、任意のアプリケーションを配布できる。アプリケーションの配布は、サービステンプレート内のVMテンプレートで行う。VMMではサービスの更新を利用し、任意のタイミングで仮想マシンへアプリケーションを配布する。