前回はプロジェクト管理ツールをうまく利用するための勘所として、5つのポイントのうち、2つを見てきた。今回は残りの3つのポイントを見ていこう。

後藤 年成
マネジメントソリューションズ 取締役 PMP

 プロジェクト管理ツールには、「現場の見える化」のほかに、下記の5つの導入メリットがあると前回述べました。

(1)ツールはコミュニケーションの取引コストを下げる
(2)ツールはプロジェクト内の隙間を埋める
(3)ツールはプロジェクトの課題処理速度(意思決定)を高める
(4)ツールは運用ルールを定着化させる
(5)ツールはプロジェクトマネジメントの教育を肩代わりする

 前回に引き続き(3)~(5)について個別に見ていきましょう。

課題処理速度を高めるためのポイント

 皆さんの心の中には、「意思決定はトップが行うもの」という感覚があるかもしれません。しかし、プロジェクトにおける意思決定について言えば、何もプロジェクトマネジャー(PM)だけが行うものではありません。

 各チームのリーダーや担当者も、日々業務の中でプロジェクトを進めるための意思決定をしています。これを「現場レベルの意思決定」とします。また、PMやPMOは1歩先、2歩先を見据えて、プロジェクト全体の方向性を決めるための意思決定をしています。これを「戦略レベルの意思決定」とします。

 プロジェクトをうまく回すためには、必要な課題が、必要なレベルで速やかに意思決定されていく必要があります。PMやPMOが本来の役割でない「現場レベルの意思決定」に忙殺されていたり、現場では何ともしがたい「戦略レベルの意思決定」をチームリーダーが抱えていたりすると、プロジェクトはいとも簡単に止まってしまいます。

 こうした事態を避けるには、ある課題が、しかるべきレイヤーで適切に処理されていることが重要になります。そこでは、プロジェクト管理ツールを利用して、「エスカレーション(またはその逆)の仕組み」と「円滑な意思決定の仕組み」を作り込むことが重要になるのです。