また「通話品質が良い」と言われているcommは、R値の中央値が51.5でした。これはIP電話の品質クラス分類のR値で言えば、クラスCに分類される結果となりました。

 IP電話の品質クラスとは、クラスAが固定電話並みとされR値は80超、クラスBは携帯電話並みでR値は70超、クラスCは通話が可能なレベルとされR値は50超です。また各クラスには遅延時間に関する基準もあります。そのため、正確に分類する場合は遅延時間も考慮する必要があります。今回、遅延時間を測定していないのは前述の理由の通りです。

 実際の結果を見てみましょう。図3はSkypeの結果、図4はcommの結果です。これらを比較したところcommについては音声レベルが低いという結果が出ました。

図3●Skypeの測定結果
図3●Skypeの測定結果
[画像のクリックで拡大表示]
図4●commの測定結果
図4●commの測定結果
[画像のクリックで拡大表示]
図5●commを利用している受信端末側の受話音量を最大にしてから再度音声品質を測定した結果
図5●commを利用している受信端末側の受話音量を最大にしてから再度音声品質を測定した結果
[画像のクリックで拡大表示]

 そこで受信端末側の受話音量を最大にしてから再度音声品質を測定してみたところ、R値が良くなっていることを確認できました(図5)。受話音量を含めて同一の環境で測定しているので、commはSkypeやLINEと比較して受話音量が低くなる傾向があると言えます。

 しかし、commは音声データをサーバー経由でやりとりしているため、「つながりやすさ」という部分は評価できます。実際、TTC標準JJ-201.01では、R値を算出するためのパラメータ21個内に、利便性などによるユーザ評価向上を見込む補正項があります(パラメータ名A)。残念ながら現時点では適用指針が不明確であるため適用は不適切とされていますが、将来的には利便性を含めた客観評価が可能になると思われます。

 また、LINEのR値(中央値)は72.5となっており、先ほどの品質クラス分類ではクラスBに分類されます。まずまずの音声品質と言えるでしょう。

 今回の測定結果を見る限り、Skype、LINE、comm共に一定の通話品質を持っていることが分かりました。着信までの不安定さ(着信時間が長かったり、着信できなかったり)や、他のアプリケーションとの競合など気になる部分もありましたが、LTEの本格普及や端末の高性能化といった条件が整えば、VoLTEを脅かす存在になる可能性を秘めていると言えるでしょう。

 今回の特集では限定された環境で音声品質評価を行いました。しかし実際にこれらサービスを使用する状況は多岐に渡ると思います。例えばLTE回線は通信速度だけでなく、低遅延であると言われていますし、使用する端末によって音声再生時にノイズの除去や再生速度を調整する機能が搭載されていたりと、音声品質を左右する要素が多数存在しています。

 最後に、今回の測定は各種サービスを導入する際の評価方法の一助となることを目的としたものです。試験端末の種類や通信回線種別、アプリケーションのバージョン、通信回線の状態などによって測定結果は変化することをご了承下さい。本特集は今回で終了ですが、あらためて通信環境や使用端末による音声品質評価の比較や音声の遅延測定、「Viber」や「カカオトーク」など他のサービスも含めた音声品質評価を行い、記事化したいと思います。