図A●岩手県が導入したクラウド型の被災者台帳システムの概要
図A●岩手県が導入したクラウド型の被災者台帳システムの概要
岩手県庁舎で運用するシステムを市町村が共用するプライベート型である
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 震災後の復興活動の焦点が被災者の生活再建に移り、自治体では新規のIT需要が生まれている。被災者の支援状況を把握する「被災者台帳システム」はその一つである(図A)。

 同システムとしては兵庫県西宮市が開発し、無償公開したパッケージ版が有名。震災後には新たにクラウド型のサービスが登場した。新潟大学が岩手県などと共同開発したものだ。開発を率いた新潟大学の井ノ口宗成助教は、「業務を柔軟に追加・修正しながら使い続けられる柔軟さを狙って開発した」とシステムの特徴を語る。

 被災者台帳システムは、罹災証明を受けた被災者を登録後、義援金の支払いから税金や保険料の免除、住宅再建の支援など、支援制度の受給状況を洗いざらい管理するために使う。住民基本台帳と連動するため、サーバーは岩手県庁に置き、市町村がLGWAN内で利用するプライベートクラウド型にした。2011年秋から宮古市の業務をベースに開発に着手、他の市町村の利用も募り6市町村が導入を決めた。現在は各市町村で、本格運用への移行途中だ。

 宮古市では、システム化によって被災者に対する支援の漏れをなくすほか、「仮設に住む被災者を訪れた介護士が生活状況を書き込むなど、被災者の支援で関係者が情報を共有できる」というメリットにも期待を寄せる。