しなやかな防災システムを実現するには、様々な情報を組み合わせるマッシュアップと呼ぶ手法も有効だ。東日本大震災では、災害情報のマッシュアップが成果を上げ、官民連携のモデルケースとなった。行政機関のデータだけでなく、民間企業が持ち寄ったデータを利用したのが特徴だ。

カーナビが収集した情報を利用

図5●ITSジャパンなどが参加した災害情報提供の考え方
図5●ITSジャパンなどが参加した災害情報提供の考え方
官民の災害・交通情報を持ち寄ったマッシュアップ地図を作成、Webサイトで公開する
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 代表例が、自動車やカーナビ装置関連メーカーで構成する業界団体のITSジャパンが提供した交通情報である(図5)。ホンダなど加盟社のカーナビ装置が収集した走行情報をまとめ、「被災地で通行できた道路」として広く公開したのだ。

 この交通情報を、行政が提供する災害情報などとマッシュアップしたのが、災害情報を可視化するために産学連携で組織した「EMT(Emergency Map Team)」である。カーナビの情報を内閣府や自治体が提供した交通規制情報などと組み合わせ、避難所と物資輸送路の位置関係を示す地図を公開した。

 EMTが作成した地図は、被災地で救援関係者が利用する最も重要なものの一つになった。EMTがマッシュアップの手法で作成した被災地地図は、1000種類を超える。

 実績を踏まえ、関係者は恒久的に官民が連携できる体制作りにも乗り出す。ITSジャパンは13年度をメドに、災害時と平時を問わず走行実績情報を行政機関などに提供する体制を整える計画だ。