TwitterやFacebookをはじめとするSNSで災害情報を発信する自治体や政府機関が増えている。復興関連を含め、災害関連情報を発信する団体は300を超えた。利用者も急増しており、消防庁(@fdma_japan)のTwitterフォロワー数は、震災前の3万人から現在は23万人超に達する。

緊急通報の代役果たす

 自治体や政府機関がSNSで狙っているのは市民向けの情報発信だけでなく、市民から情報を吸い上げる仕組みづくりだ。震災の際は、市民の投稿が人命を救った例があった。宮城県気仙沼市で孤立した被災者らが海外在住の肉親に宛てて、救助を求めるメールを携帯電話で送信。この肉親がTwitterを使って行政機関を動かした。当時は携帯電話回線が輻そうし、緊急通報がつながらなかったという。SNSがその代役を果たしたのだ。

 現状では、救助の要請や問い合わせといった市民からの投稿をSNSで受け付ける仕組みを持つ行政機関は皆無に等しい。宮城県危機対策課の千葉章副参事は、「SNSに返答するための体制を作るのは負担が大きい。不確かな情報に振り回される危険もある」と問題点を挙げる。震災の際に「避難所に物資が全く届かない」といったデマが広がった例もあったという。古い情報がリツイート(他人のつぶやきを自分のフォロワー向けに送ること)され続けた結果、誤情報になるという問題点も浮上した。

SNSで「119番」

 欠点はあるにせよ、即座に多くの人に情報を伝達できるSNSの「しなやかさ」は電話網にない武器だ。そこで政府はSNSを緊急通報に活用する検討に入った。消防庁が12年8月末からネット関連企業などと検討会を開催、2013年度に試験運用を実現する方針だ。

 検討会にはTwitter Japanやミクシィ、スマホ向け通話アプリ「LINE」を提供するNHN Japanなどが参加した。消防庁防災情報室の白石暢彦室長は「人命が救われた例からも、緊急時に電話を補完できると考えている」とSNS活用に意気込む。

 その際に、市民から寄せられたあやふやな伝聞情報やデマをどう排除するか。消防庁は書き込み内容や属性情報の自動解析により、一定の情報フィルタリングが可能と見ている。緊急通報を受け付ける仕組みも検討中だ。Twitterの場合、投稿を分類するハッシュタグとして「#119」のような専用のものを設けるか、専用アカウントの設置を考えているという。大規模災害時にだけ運営元が専用ページを開設し、緊急通報を可能にする案も出ている。