by Gartner
サンディ・シェン リサーチ・ディレクター
マイク・マクガイア リサーチVP
川辺 謙介 主席アナリスト

 「モバイル・ソーシャル・ネットワーキング」「モバイル・アプリケーション・ストア」「位置情報連動サービス」。これらは今後2年間、一般消費者にリーチするのに最も有用なモバイルサービスになるだろう。デジタルマーケティングで明確な戦略を持っていない企業は、今すぐにこれらのサービスの利用検討を始めるべきだ。

 モバイル・ソーシャル・ネットワーキングは、2014年には全世界で10億人のユーザーを獲得するだろう。ガートナーの調査によれば、携帯電話を持つ人の15%が、既にこうしたサービスにアクセスしている。今後、多くの消費者コミュニティーを抱える小売業や教育、ヘルスケア、公共部門、多くの従業員が対面サービスを展開している薬局や運送業などに大きな影響を与えるようになるだろう。なお、2015年までに、モバイル専業のソーシャル・ネットワーキング・サービス事業者は4~5社まで集約化が進みそうだ。

 モバイル・アプリケーション・ストアは、顧客と双方向でやりとりする重要な接点となるモバイルアプリを配布する有効なチャネルだ。企業が利用するアプリケーション・ストアには、大きな顧客ベースに加え、広告サポート、ユーザーレビューやランキング、レコメンドエンジン、決済・レポート作成といった機能が整備されていることが望ましい。

 位置情報連動サービスは、サービスデリバリー、顧客サポート、マーケティングの効率化に有効である。サービスの利用者は2012年末には全世界で8億人に達し、2015年には広告収入を中心に135億ドル(約1兆円)の市場に成長するとみられる。直近で最も興味を引きつける用途は、ナビゲーション、位置検索、友人検索などだ。

 ここまで紹介した三つのサービスとは別に、モバイル広告の分野にも目を光らせておくべきだ。モバイル広告は今後2~5年のうちに、広告の主流派の一つになる。プライバシー問題など複数の課題を抱えつつも、進化を加速させている。モバイル広告市場は今後2年間で2倍以上に拡大し、2015年には206億ドル(約1兆6000億円)と、広告市場の4%に達するとみられる。

 この分野では、「バーコードマーケティング」「モバイルクーポン」「拡張現実(AR)」の三つの技術に注目するとよい。

 バーコードマーケティングは、今後2~5年で主流になるだろう。バーコードは新たなダイレクトマーケティングの鍵だ。消費者がキャンペーンサイトなどに素早くアクセスできるようにするほか、ブランドへのロイヤルティーを高めることができる。

 モバイルクーポンは、消費者の購買頻度や客単価を高めるメリットがある。既に一部の小売店が先行導入しており、有効なノウハウが蓄積されつつある。長期的に見ると、モバイルクーポンはマルチチャネル化する電子クーポン戦略の一つのピース、という位置づけになるだろう。

 拡張現実は、現実空間に画像や音声といったバーチャルな要素を重ね合わせる技術だ。位置情報連動サービスなどを組み合わせることで、サービスのユーザーエクスペリエンスを高めることができる。プライバシーの問題や技術的な課題は残されているが、5~10年以内には主流になるだろう。