日本Androidの会は2012年10月20日、仙台市の東北大学でイベント「ICT ERA + ABC 2012東北」を開催した。ERAは「Earthquake Reconstruction Aid」、「震災復興支援」を意味する。ABCは「Android Bazaar and Conference」。日本Androidの会が開催してきた展示と講演イベントで、今回が初めての地方開催となる。

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写真●「ICT ERA + ABC 2012東北」の会場、東北大学
写真●日本Androidの会 会津支部のドロイドくん(左)と、OESF(Open Embedded Software Foundation)のドロイドくん(右)
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写真●ICT ERA + ABC 2012東北 実行委員長 佐々木陽氏
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 KDDI 代表取締役会長 小野寺正氏、日本マイクロソフト 代表執行役 社長 樋口泰行氏、総務省 大臣官房審議官の谷脇康彦氏など日本のICTのキーパーソンをはじめ、エンジニア、研究者、デザイナー、ビジネスマン、プランナーから高校生・大学生まで多彩なスピーカーが登壇。ICT ERAとABC 2012東北あわせて79のセッションと2つのパネルディスカッション、26のライトニングトークが行われた。

キーパーソンが震災復興支援を語るICT ERA

 東北大学の萩ホールで行われたのが「ICT ERA」。日本のICTのキーパーソンが復興をテーマに講演を行った。

「遺体の身元確認に歯科医師とICTが貢献」東北大学 副学長 青木氏

写真●東北大学 情報科学研究科 教授で副学長の青木孝文氏
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 最初に登壇したのは東北大学 情報科学研究科 教授で副学長の青木孝文氏。「大規模災害における身元確認とICT」と題して基調講演を行った。

 画像認識を専門とする青木氏は、宮城県警、歯科医師らと協力し、震災で亡くなった遺体の身元確認にあたってきた。青木氏自身石巻の出身で「故郷が被災したことに衝撃を受けた」と語る。

写真●検死所
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 身元確認は、遺体のX線画像と、診療記録を突き合わせて行う。照合システムを大学で開発、現地に持ち込んだ。「現在も遺体の身元判定が続いている」(青木氏)。システムは今も宮城県警で稼働中だ。

写真●歯科情報照合システム
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 遺体の身元判定のため、地元だけでなく全国から歯科医師が駆けつけた。その数は累計2000人を超える。「沖縄、北海道から、多くの歯科医師が自分の医院を、人によっては1週間休んで身元確認を行ってくれた。本当に頭が下がる」(青木氏)。

 災害以外にも、日本では年間約1000体の身元不明遺体がある。身元確認のため「生前の歯科情報の入手方法の確立と標準化、システム化、身元確認データベースの整備が必要」と青木氏は訴えた。