BCP(事業継続計画)見直し
前年調査の4割弱から3割弱に減少

 東日本大震災以降、多くの企業でBCPの見直しが進んだ。前年調査では「既に見直した/現在見直し作業を進めている」が4割弱あったが、今回調査では「今年度見直した/見直す予定」が25.9%、「来年度以降、見直す予定」が3.5%と一段落しつつある(図3-1)。

図3-1●BCP(事業継続計画)の見直し状況と取り組み(複数回答)
図3-1●BCP(事業継続計画)の見直し状況と取り組み(複数回答)
3割弱の企業が見直しを進めている。「社内の通信体制の整備」と「サーバーの構成変更や増強」の増加が目立った。
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 ただ文部科学省地震調査研究推進本部によると、大規模地震が今後30年以内に発生する確率は「東海地震」が88%、「首都直下型地震」と「東南海地震」が70%程度、「南海地震」が60%程度と高く、予断を許さない状況。見直しはまだ続きそうだ。実際、見直しのきっかけとして「東海/東南海/南海/首都直下型地震」を挙げる企業も13.2%あった。

図3-2●BCPの見直しの具体的項目(複数回答)
図3-2●BCPの見直しの具体的項目(複数回答)
「安否確認システムの導入」が最も多かった。ネットワーク機器の冗長化やデータセンターへの移転も進んでいる。
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 見直しの対象は、「サーバーの構成変更や増強」と「復旧手順の見直し」がともに半数以上。前年調査との比較ではサーバーの見直しのほか、「社内の通信体制の整備」の増加が目立った。

 具体的な取り組みを聞くと、通信体制の整備では「安否確認システムの導入」が6割を占めた(図3-2)。その一方で、「拠点間をつなぐ電話網の見直し」や「従業員のモバイル環境の整備」は減少した。

 ネットワークの見直しでは前年調査と同様、「ネットワーク機器の冗長化」が最も多く半数近くを占めた。機器の冗長化に比べて運用コストがかさむが、「拠点間ネットワークの冗長性確保」も伸びている。

 サーバーの見直しも前年調査と大きな変化はない。「社内からデータセンターなどへの移転」と「データのバックアップ体制の見直し」が中心で半数弱を占める。「バックアップとしてのクラウドの採用」もやや伸びた。

 前述した丸紅は東日本大震災後に一部の幹部と連絡が取れなくなったことを問題視し、スマートフォンの導入を決めた。震災直後は携帯電話大手3社で最大70~95%の通話規制がかかったが、データ通信は比較的問題なく使えた。そこで社長や役員を含む部長職以上に韓国サムスン電子の「GALAXY S II」を配布し、最悪の場合はSkypeで通話できるようにした。全社向けの安否確認システムは導入済みだったが、首都圏の大規模災害を想定した幹部用の安否確認システムを新たに導入。大阪の人事部門からスマートフォンに安否確認のメッセージを送ると、Skypeが自動起動する仕組みとした。