日本国内のシステムをアジア地域のデータセンター(DC)に、バックアップする災害復旧(DR)サービスの選択肢が急速に増えている()。NECは2012年10月29日、中国とシンガポールにあるDCを使うサービスを開始すると発表。TISも同日、韓国のDCで、国内システムのDRサービスを始めると発表した。

表●アジアのDCを利用する災害復旧(DR)サービスの提供状況
事業者の増加に加え、バックアップ用システムを設置するDCの場所も多様化してきた
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 地震による国内システムの被災リスクを回避するなどの目的で、顧客企業がバックアップシステムの海外設置を本格化させる動きに対応。2012年度下期に入り、顧客においてDR対策の具体的な予算化が進み始めたのをにらみ、需要の取り込みを急ぐ。

 NECはBCP(事業継続計画)策定のコンサルティングなどと併せて、提携している中国とシンガポールのDC事業者の設備を使ってDRサービスを展開する。「国内のシステムが被災した際の影響が、グローバルの事業に影響しないように、海外DCを活用したDR構築の相談が増えている」(NEC)という。

 シンガポールは日本に比べて大地震や津波の被害を受けるリスクが低い。中国でも大地震が少ない大連市などのDCを利用するもようだ。

 TISのサービスは、同社の最新DCである「GDC御殿山」と、提携する韓国事業者のDCを通信回線で接続して提供する。韓国もシンガポールと同様に大地震のリスクが低い。さらに韓国は電気料金が安く、ラック当たりの料金は日本に比べて4~5割程度安いとされている。

 アジアのDCを利用したDRサービスでは、NTTデータとソフトバンクテレコムが今年初めから韓国の事業者と提携して手掛けており、先行している。

 ソフトバンクテレコムは、「既に複数の日系企業が災害対策などのため韓国のDCを利用し始めている」と明かす。NTTデータは、提携先の韓国LG CNSが2013年1月に釡山で新DCを開設するのに合わせて、日本での売り込みをさらに強化する。

 日韓関係は竹島の領有権問題が悪化しているが「顧客はDCを選択する際のマイナス要素とは考えていないようだ」(日系のDC事業者)。

 今後、日立ソリューションズは香港のDCを利用したDRサービスを始める計画。NECは、北米や南米のDCを利用したDRサービスも提供する予定だ。海外DCを利用したDR対策の選択肢は続々と増えていきそうだ。