現在のプロジェクトマネジメントにおいては、ある程度規模が大きくなるとプロジェクト管理ツールは必要不可欠なものになる。しかし、プロジェクト管理ツールを「入れただけ」のプロジェクトが少なくない。今回は、プロジェクト管理ツールを使い倒すために考慮したいポイントについて考えてみる。

後藤 年成
マネジメントソリューションズ 取締役 PMP


 皆さんもプロジェクトでプロジェクト管理のためのツールを利用したことがあると思います。現在はフリーのツールも数多く、様々な選択肢があると思います。また、簡単なマクロを使って作成したExcelシートを使いこなしているのであれば、立派なツールと言うことができます。

 それでは、プロジェクト管理ツールは何のために入れるのでしょうか。一番の目的はやはり、プロジェクトで発生する膨大な情報をシステムで管理することによる「プロジェクト状況の見える化」です。ツールを使っての「プロジェクトを見える化」に関する記事はいたるところにありますので、今回は「プロジェクトの見える化」を超えてより現場の生産性を上げるためのプロジェクト管理ツールの使い倒し方を考えてみたいと思います。

「見える化」以外のプロジェクト管理ツール導入のメリット
(1)ツールはコミュニケーションの取引コストを下げる
(2)ツールはプロジェクト内の隙間を埋める
(3)ツールはプロジェクトの課題処理速度(意思決定)を高める
(4)ツールは運用ルールを定着化させる
(5)ツールはプロジェクトマネジメントの教育を肩代わりする

 上記にあるように、プロジェクト管理ツールには「現場の見える化」以外にも多くのメリットがあります。プロジェクト管理ツールの導入の際にはこれらのメリットも最大限に享受できるように考慮すると現場の生産性も高めることが可能になると思います。それでは、上記(1)~(5)の考慮点を個別に見ていきましょう。

コミュニケーションの取引コストを下げるための工夫

 プロジェクトを進める中で、当然のことながら、関係者はコミュニケーションを取りながら、プロジェクトを推進していきます。個人がそれぞれ1対1のコミュニケーションをとると仮定すると、メンバー数(n)に対するコミュニケーションパスの数は、「n(n-1)/2」で表すことができます。例えば、6人のプロジェクトだと、コミュニケーションパスは15通りとなり、それだけコミュニケーションの取引コストがかかります(図1)。

図1●コミュニケーションの取引コストを減らす工夫
図1●コミュニケーションの取引コストを減らす工夫
[画像のクリックで拡大表示]

 ここに、プロジェクト管理ツールを入れ、必要な情報をツールで管理すると、コミュニケーションパスはツールへのアクセスパスである6通りで済みます。プロジェクトの参加人数が多くなればなるほど、そのメリットは大きなものとなります。