「接客現場ではタブレット端末として使い、オフィスでは同じ端末を基幹系システムのクライアント機として利用する。こうした使い方ができるのはWindows 8だけだ」―。日本マイクロソフト(MS)の樋口泰行社長は2012年10月26日のWindows 8発売記者会見でこう力説した。

 MSはタッチ操作に最適化した「モダンUI」を追加したWindows8を、「従来型PCとしても利用できるタブレット端末用OS」として企業に売り込む()。同社製のタブレット端末「Surface」は当面、日本では販売しない。代わりにNTTドコモと提携し、通信機能を備えたWindows 8搭載タブレット端末を提供する。

表●企業ユーザーにとってのWindows 8の特徴
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 タブレット機能が必要ない企業は、Windows 8を「改善版Windows 7」として利用できる。Windows 8はARMプロセッサ用の「Windows RT」を除き、既存のWindows 7用アプリがそのまま動作する。ウイルス対策機能をOS本体に内蔵するなど、セキュリティ機能も強化している。

 MSはWindows 8でWindows XPからの移行需要も狙う。XPのサポート終了は2014年4月に迫っている。ただしXPユーザーがWindows 8に移行する際には注意すべき点がある。最も大きいのは使い勝手が変わることだ。

 Windows 8では「スタートボタン」が廃止され、タッチ操作に最適化した操作画面「スタート画面」に置き換わった。マウスとキーボードを使う場合でも、アプリケーションはタッチ操作用のスタート画面から起動する。

 さらにセキュリティ機能の「SmartScreen」をOSに内蔵しており、電子署名のないアプリや、MSにとって未知のアプリなどに対して、OSが起動をブロックしたりユーザーに警告を出したりする。こうした操作性の違いに戸惑うユーザーが出てきそうだ。

 仮想化機能にも注意が必要だ。Windows 8では、従来の「Virtual PC」から「Hyper-V」に変わる。Windows 7の目玉機能だったXP用アプリが動く「XPモード」は廃止した。MSはWindows 7の提供を当分継続する予定で、販売終了日などは10月時点で発表していない。XPとの互換性の高さを重視するのであれば、当面はWindows 7の導入を継続するという選択肢になる。