国内外に数十ある戦略拠点の部課長クラスには、即戦力となる優秀な人材を常に配置したい。そのための要員計画はどうあるべきか――。「ヒトの全体最適」を目指し、日本ではグローバル企業を中心に導入が始まったタレントマネジメント(才能管理)のシステム。パッケージ製品を賢く選び、自社に合った人材戦略を立てやすいシステムを築きたいところだ。欧米発の同分野の製品は、日本企業の導入率がまだ低い。国内で利用できる主要9製品の適性を吟味しよう。

 タレントマネジメントを効率よく実践するには、必要な機能をあらかじめ用意しているパッケージ製品の利用が効果的だ。製品の基本的な機能は共通しているが、強みはそれぞれ異なる。

 タレントマネジメント市場でM&A(買収・合併)が活発である点にも注意が必要だ。2011年12月に独SAPがクラウド型サービス大手の米サクセスファクターズを34億ドル(約2700億円)で買収すると発表。12年2月には米オラクルが、サクセスファクターズのライバルだった米タレオを19億ドル(約1500億円)で傘下に収めた(図1)。この半年で業界地図は大きく塗り変わった。今後も大きく変化するとみられる。

図1●タレントマネジメント製品ベンダーのM&A(買収・合併)を巡る動き
買収は一部事業の買収も含む
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 買収した各社製品の機能の多くは、SAPやオラクルのERPも備えている。既存の機能を補完・強化したり、タレントマネジメントを実践するうえでの使い勝手の良さを実現したりするのが狙いだ。日本で利用できる主な9製品の概要を見ていこう。

人材DBに加え七つの機能を提供

 タレントマネジメント製品で共通するのは、人材DBの構築・管理機能である。従業員の基本的な人事情報に加えて、スキルや経験などのプロファイル情報を登録できる。多くの製品では利用者が独自にデータ項目を追加することも可能だ。

 このほかに主な機能は七つある。現在、利用例が多いのは「後継者管理」「目標・パフォーマンス管理」「学習管理」である。

 後継者管理は幹部の後継者としてふさわしい人材を選んだり、育成計画を立案したりすることを支援する。人材の流動性が高い欧米企業では重要ポストが空席にならないようにするために欠かせない機能だ。日本企業でも海外拠点を中心にニーズが高まっている。

 目標・パフォーマンス管理は人材評価の指標や実績を管理する機能。様々な指標を設定でき、経営層にも結果を分かりやすく表示する。もう一つの学習管理は、個々の人材への教育実績を管理する。

 今後、ニーズが高まりそうな機能が、「要員計画」「報酬管理」「採用管理」「SNS」の四つだ。

 要員計画は、今後数年間の職種ごとの人件費と会社の収益などを基に、要員の採用計画を立案する。報酬管理は配下の従業員に対して、成果指標に基づいて報酬の配分をシミュレーションする機能である。

 採用管理は人材獲得の費用対効果を分析するなどにより、人材採用活動を支援する。SNSは経営戦略に基づく柔軟なチーム編成を可能にするほか、従業員の貢献度を見える化してモチベーションを高める狙いがある。