地方都市の大型施設にとって追い風となっているのが、ユーザー企業によるDC配置の最適化と、BCP強化の動きだ。

 ゲーム大手のセガは2011年10月、IDCフロンティアの「北九州DC」の利用を開始した。ゲームソフトのソースコードや音声/動画データなど、1ペタバイトのデータをバックアップしている。

 きっかけは2011年3月の東日本大震災だ。震災後、東京都大田区の本社で運営するサーバーが被災した場合でも、業務が継続できる体制の整備を決断した。「本社との同時被災がない場所という観点で、北九州DCを選んだ」(開発支援部の藤本光伯部長)。

 ただし、実際にBCPを強化したユーザー企業はまだ少ない。富士キメラ総研の羽賀氏は、「ユーザー企業によるBCPの整備は、これからがむしろ本番」と分析する。

 東日本大震災の直後に「DCの西日本移転」などが話題になったが、実際に移転に踏み込んだユーザー企業はごくわずかだった。富士キメラ総研の調査では、東日本大震災が国内DC市場に与えた増収効果は92億円にとどまる。同社による国内DC市場規模の推計は2011年度で1兆2609億円なので、特需効果は1%に満たなかったことになる。

 2011年に特需が発生しなかったのは、DCの移転には時間がかかるからである。現在、東京に加えて沖縄県の「FRT iDC」で社内システムを運営するカルビーは、システムの沖縄移行に5年の歳月をかけた。

 稼働中のシステムを移行する場合、東京と沖縄でシステムを同時稼働し、新サイトでシステムが問題なく稼働するかを検証する必要がある。ハードの更新時期が来たシステムでなければ、コスト的に移行は難しい。対象システムが全て更新時期を迎えるまで、移行プロジェクトは完了できない。よって東日本大震災に伴うBCP需要は、今後3~4年が山場になる。