あくまでも筆者が個人的に思っていることだが、日本国内の企業がソーシャルメディアを活用して情報を発信する際、そのプランニングの仕方が、かなり大雑把なものになっているのではないかと感じることがある。あえて誤解を恐れず、もっと端的に言えば、運用が“場当たり的”になってしまっているのだ。

 こうした印象は、Twitter上のツイートや、Facebookページにおけるポストなどを見ていると、特に感じる。これらを発信していく際に、年間(あるいは月間)のプランにおいて、「いつ」「どのタイミングで」「どのようなメッセージを」「どのような形で」発信していくかといった、具体的な戦略や計画がきちんとなされていない状態で淡々と運営されているように見受けられるケースが少なくない。

 これはもしかしたら、日本国内において語られてきた国内外の事例の多くが、ソーシャルメディアによるコミュニケーションの持つ特性のごく一部にすぎない「リアルタイム性」や「カジュアルさ」を強調したものに偏り過ぎていたことに起因するのかもしれない。あるいはソーシャルメディア上でのコミュニケーションを、担当者の属人的なアプローチに依存しすぎてしまっていることも一因だろう。いずれにせよ、ソーシャルメディアから情報を発信していく際にきちんとした戦略や計画が伴っていないように感じられる。

海外では鉄道ダイヤ並みの綿密な運用が当たり前

 一方、海外では、ソーシャルメディア上でコミュニケーションを展開していく際、事前に年単位での目的やゴール設定、そして企業の年間のマーケティングカレンダーに合わせた形でのテーマやメッセージの設定が、ほぼ必須の作業として考えられている。さらに、マーケティングカレンダーに合わせて設定されたテーマやメッセージに沿う形で、一日単位でツイートやポストの内容を決め、その表現や文言、そして使用する画像や映像などまで具体的に作りこんでいくことが多い。さながら鉄道の運行ダイヤを決めていくような形で、メッセージのスケジュールを組んでいくのだ。これは、特に企業規模が大きくなるにつれて顕著に見られる傾向である。

 もちろん、このようにスケジュールをガチガチに組んでいく一方で、「リアルタイム性」を伴うコミュニケーションも重要視している。運営において特にリアルタイムにやり取りを求められる場合にもきちんと対応できるよう、スケジュールに柔軟性を持たせることも忘れていないし、スケジュールそのものを組み替えていくことも頻繁に行われている。重要なのは、決して“場当たり的”な形で発信しないということだ。

 なぜ、このような形できちんと戦略や計画を細かく作り込むようなことをしているのだろう。それは、ソーシャルメディアが、企業のコミュニケーションにおいて重要なチャネルのひとつとして位置付けられているからである。また、他のチャネルと密接に連携させることでコミュニケーション活動全体のパフォーマンスを最大化させることを大きな目的としているからでもある。ソーシャルメディアによるアプローチが、企業全体のコミュニケーション活動から浮いた存在にならないよう、企業の年間のマーケティングカレンダーをベースにし、細かなアプローチを考えていくという点は見習いたいところだ。

細かい作り込みがパフォーマンスを向上させる

 特にソーシャルメディアの場合、誰でも簡単に情報を発信できる。それゆえに、情報を発信するにあたって、内容やタイミングをきちんと考えないで出してしまいがちだ。

 ツイートやポスト一つひとつまでスケジュールをきちんと組んで細かく作りこんでいくという作業は、想像以上に大変でもある。ただ、場当たり的なアプローチで臨んでしまうと、なかなかパフォーマンスを向上させることはできない。企業全体の戦略にきちんと沿った形で、細かなPDCAサイクルを回していくことが、長い目で見た時に大きなメリットをもたらすことになるはずだ。

熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)
リーバイ・ストラウス ジャパン デジタルマーケティングマネージャー
熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)1974年生まれ。プロミュージシャンからエンジニア、プロダクトマネージャー、オンライン媒体編集長などを経て、マイクロソフトに入社。企業サイト運営とソーシャルメディアマーケティング戦略をリードする。その後PR代理店バーソン・マーステラでリードデジタルストラテジストを務め、2011年12月よりリーバイ・ストラウス ジャパンにてデジタルマーケティングマネージャーとなる。