エンタープライズICTのNo.1情報誌「日経コンピュータ」とNo.1情報サイト「ITpro」がタッグを組んだ大型企画「日経コンピュータ×ITpro 連動特集」がスタートしました。今回はその第1弾として、「情報システムの基盤を国内外のどこに集約・配置するのか」という、多くの企業にとって大きな課題となっているテーマを取り上げた「世界最適のシステム立地戦略」をお届けします。

 安く安定した高速回線とクラウド型のシステムが当たり前になった今、日本中、世界中のシステムを集約する動きが盛んになっている。集約先は必ずしも日本とは限らない。

 ソニー、サントリー、OKIデータ--。彼らは日本で使うシステムを、アジアのデータセンター(DC)に移設した。シンガポール、マレーシア、タイ、香港、日本の地方都市。ユーザー企業にとって、これまで首都圏一辺倒だったDCの選択肢が、一気に広がっている。一方で、首都圏では新型DCの開業が相次ぐ動きもある。

 ユーザー企業は現在、どのような視点でDCを選んでいるのか。アジア、地方都市、首都圏におけるDCの強みは何か。先進事例と国内外DCの最新動向を基に、ユーザー企業にとってのDC選びの勘所を探る。

姿を消したサーバー

 2012年、ソニーが日本に設置していた業務システム用サーバーが、全て姿を消した。

 生産管理などの基幹系システムを、シンガポールのDCに移転したのだ。これらサーバー数の合計は約2000台に上る。東京と名古屋のDCで稼働していたものだ。

 2007年から5年をかけた大規模な移転プロジェクトが一区切りついたのは今春のこと。それから6カ月が経過するが、使い勝手に問題はなく、日本にシステムを置いていた頃と同じようにシンガポールのシステムを利用できているという。「ITインフラの総コストは従来比で2割減。期待に近い効果が出た」とソニーの堺文亮CIO(最高情報責任者)は語る。

 ソニーの取り組みで注目すべき点は、単なるシステムの移転だけではないことだ。

IT業務を機能別に分解・統合

 ソニーはシステム開発、サーバーの物理的な設置、システム運用、ハードウエア保守・サポート、戦略策定・企画といったITに関連する業務を全て機能別に分解し、アジア地域で統合。各地に適材適所の役割を分担させることで、コスト削減とガバナンス強化を実現している(図1)。

図1●日本を含むアジア地域のシステムをシンガポールに集約したソニーの取り組み
図1●日本を含むアジア地域のシステムをシンガポールに集約したソニーの取り組み
企画は日本、開発はインドと中国、システムの設置とハードウエア保守はシンガポールで、運用はインドからリモートでと、機能により最適な場所を選び組み合わせている
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