表示装置としてのディスプレイというハードウエア技術に熱い視線を向ける映画監督がいる。2012年8月25日に公開された大ヒット映画「るろうに剣心」で監督を務めた大友啓史氏だ。「ディスプレイの進化が映像の可能性を無限大にする」と、大友氏は言う。

映画監督の大友啓史氏
映画監督の大友啓史氏
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 大友氏は1990年にNHK(日本放送協会)に入局し、1997年から米国ロサンゼルスに留学した。ハリウッドで脚本や映像演出について学び、2年後の1999年に帰国。その後、テレビドラマ「ちゅらさん」「ハゲタカ」「白洲次郎」「龍馬伝」の演出、映画「ハゲタカ」の監督などを手がける。2011年に独立。2012年8月25日には、独立後に監督を務めた第1弾の映画「るろうに剣心」が公開された。

 大友氏の作品の特徴は、映像の質感や色に対する強いこだわりだ。ハリウッドで学んだ映像演出の技術が生かされているのだろう。映像の色、陰影、動きとストーリー展開が相まって、視聴者をぐいぐいと引き込んでいく。8月に公開された映画「るろうに剣心」は、もともと漫画やアニメとして有名な作品である。実写映画は今回の作品が初めてだが、こだわりの映像演出を駆使したアクションシーンは迫力にあふれ、実写の魅力が遺憾なく発揮されている。

 ディスプレイ産業は今、大きな曲がり角にある。特に大型ディスプレイは、大画面化の次の技術進化の軸をなかなか見いだせず、停滞感がある。しかし、ディスプレイの進化に対する潜在的なニーズは強い。大友氏は映像クリエーターの立場から、ディスプレイ技術の進化を渇望している。その思いは深く、ディスプレイ技術の専門イベント「FPD International 2012フォーラム」の基調講演に臨むほどである。