ITベンダー各社が、ビッグデータを処理する専用装置を相次いで投入する()。ハードとソフトを統合し性能を高めるだけでなく、設定・保守を容易にしたのが特徴。“上顧客”であるシステム部門だけでなく、データを事業に活用する利用部門にも売り込む。

表●大手ベンダーの主なデータ処理専用装置の特徴
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 「利用部門主導で導入することも想定している」。日本IBM ソフトウェア事業の塚本眞一インフォメーション・マネジメント事業部長は、2012年10月26日に出荷する「PureData System」の売り込み先についてこう語る。

 PureDataは顧客事例を基にした設定のひな形を用意する「PureSystems」の第2弾。アプリ用装置の「PureApplicationSystem」と併せて導入すれば、ネット販売のシステムなどの構築期間を大幅に圧縮できる。従来の数カ月が、数時間から数日になるという。ハードの構成を特定できるので、OS・ミドルウエアなどの更新作業が容易かつトラブルが起きにくい点も訴求する。

 IBMは電子商取引などの大量トランザクション、データウエアハウス(DWH)など用途別に三つの装置を用意する。

 一方、日本オラクルはデータベース装置「Exadata」の4世代目を“万能機”として、年内にも投入する。前機種に比べ、HDDと併用する記憶装置のフラッシュメモリーを4倍、一時記憶のDRAMを75%増にそれぞれ引き上げ、製品名に「インメモリー」を冠す。

 半導体メモリーに全データを展開しておくことなどで「大量トランザクションとDWHを同時に処理しても、性能が劣化しない」(日本オラクル 製品事業統括テクノロジー製品推進本部の人見尊志本部長)という。

 オラクルも利用部門に照準を定める。「既存のOracle DBアプリを容易に高速化できる。商品企画や財務部門などが導入し、大量データを様々な切り口で分析する用途を本格的に開拓したい」(人見本部長)。

 日本テラデータは10月11日、データ処理装置の「Teradata Aster」の出荷を始めた。買収した企業のSQL高速並列処理の技術を搭載しており、Webページなど非定型データの分析に向く。顧客の行動分析など、業務を想定した機能を用意しており「マーケティングなど利用部門が、プログラミングなしに使える」(日本テラデータ 営業本部ASTERビジネス推進室の一柳健太室長)。

 データ分析システムなどを短期に構築できる専用装置が出そろった。ビジネスで使いこなすためには、分析に長けた人員の養成も必要となってくる。