NTTグループが、海外におけるITの提案力強化を急いでいる。NTTデータは業務システムの使い勝手を高める支援サービスを提供する英RMAコンサルティング、NTT持ち株会社はクラウド導入コンサルティングの米センタースタンスを、ともに2012年10月中に子会社化する。買収額はそれぞれ約10億円、40億円とみられる。上流のコンサルティングを手掛けることで、海外でのワンストップの受注体制を整える。

 「足りないピースをそろえる」。NTT持ち株会社 グローバルビジネス推進室長の奥野恒久取締役は、センタースタンスのようなコンサルティング事業を手掛ける企業を買収した狙いをこう語る。

 NTTグループは2007年頃から、海外のITベンダーを積極的に買収してきた()。その多くはネットワーク導入やシステム構築など“同業”の買収であり「海外での顧客基盤を獲得するための、いわば足し算の買収」(奥野取締役)だった。

 これに対してRMAやセンタースタンスの買収は、同グループのシステム構築やソフトウエア製品、ITインフラなどをワンストップで提供するのに必要な、上流工程での提案力を得るのが目的。グループ内の企業との“かけ算”を狙うものだ。

表●NTTグループの海外M&A戦略の概要
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 RMAは、システム全体の使い勝手に直結するユーザー体験(UX)や画面設計のコンサルティングに強みを持っている。NTTデータは同社のノウハウを吸収することで、マーケティングなどシステム部門でない利用部門が使うシステムやサービスの提案力を底上げしたい考えだ。

 センタースタンスは、日本であまり馴染みがないクラウド導入のコンサルティングを手掛ける。顧客のビジネスを分析し、クラウドに移行させてもいい業務と、強みを保つため企業内に残しておくべきシステムや業務を見極める。NTT持ち株会社としては「システムの構築やITインフラの提供、運用管理といった案件もNTTグループ全体で受注しやすくなる」(奥野取締役)との狙いがある。

 グループ内に散らばる商材や人員を束ね、リスクを取って海外で攻められるか。NTTがグローバルでIT企業として認知されるかどうかの第一関門となる。

 NTTは昨年から、グループ各社が連携し北米の顧客にワンストップのサービスを提案し始めている。月に1回は各社が米国内の拠点に集まり、グループ内で利用可能な製品やサービスを検討しているという。