ドワンゴの子会社であるキテラスは2012年9月25日、ニコニコ動画をテレビで視聴するためのアプリケーションをパナソニックのビエラおよびソニーのブラビアへ提供開始した(関連記事)。ニコニコ動画はパソコンから広がったサービスで、現在、携帯電話やスマートフォンでも見ることができる。テレビへの展開が加わることで、さらなるサービスのマルチスクリーン化、マルチデバイス化が進行している。企画・開発やデザインを担当したキテラス コンシューマエレクトロニクス事業部 事業企画セクションの栗栖 到 担当セクションマネージャーと林 絵美子氏(写真1)にテレビならではの工夫などを聞いた。

(聞き手は大谷 晃司=ITpro


ニコニコ動画をテレビに展開する際に考慮した点は。

栗栖氏:テレビ向けのアプリを開発するにあたり、ニコニコの文化でもあるコメントの見せ方はかなり工夫した。ニコニコ動画は動画のうえにコメントが流れるが、この見せ方をテレビでは変えている。

「テレビでの見やすさ」追求、30~40代ユーザーを想定

写真1●キテラス コンシューマエレクトロニクス事業部 事業企画セクション 栗栖 到 担当セクションマネージャー(右)と林 絵美子氏
写真1●キテラス コンシューマエレクトロニクス事業部 事業企画セクション 栗栖 到 担当セクションマネージャー(右)と林 絵美子氏。林氏はキテラスのコーポレートロゴのデザイナーでもある。
栗栖氏:テレビ向けに用意したのが、「テロップモード」だ。これは画面の上2行だけにコメントを流して動画視聴の邪魔をしないようにしたもの。盛り上がりを感じたい方には通常モードを用意しており、こちらは動画の上にコメントが流れる。ただしコメントの量はパソコン向けとは異なり、調整している。

 コメントで使っているフォントはパナソニックのテレビであればパナソニックが組み込んでいるフォント、ソニーのテレビであればソニーが組み込んでいるフォントを使っている。コメントの流し方については、先述のコメントの量だったり、そのほかコメントが流れるスピードだったりを「テレビでいかに見やすいか」を考慮して開発した。

 コメントだけでなく、視聴スタイルもパソコンとは異なる点を考慮している。テレビは放送が連続して流れてくる。ニコニコ動画をテレビで視聴する場合は、もちろん見たい動画を選んで再生することもできるが、それだけでなく、最初に好きなジャンルを選び、その後は連続再生してくれる、といった使い方を意識した。テレビの“ながら見”と同じだ。これはパソコンでニコニコ動画を見る場合にはなかった見方で、こうしたニコニコの新しい見方を提案したいという思いがあった。

画質は調整しているのか。

栗栖氏:動画はテレビ向けに独自の変換をし、最適化している。ただ何をしているかの詳細は公開していない。画質については、有料会員であるプレミアム会員向けの画質と一般会員向けの画質の二つを用意している。どちらもテレビ向けに最適化する変換はしているが、プレミアム会員向けの方がきれいにはなる。ビットレートなどが違うが、そこもまだ公開していない。

 ただ、全般的にテレビでの見栄えは元データにも依存するため、現時点で画質がすごくいいというわけではない。ここはまだ発展途上だ。大画面で見てもらうためには画質は重要なテーマであり、さらに改善を続けていきたい。

対象となるユーザー層が違う。

栗栖氏:例えばお勧めの動画をどういう観点から編集しているかというと、テレビユーザー向けを意識し、年齢層を高めに設定している。ニコニコのユーザーは20代や10代が多いが(関連記事)、それに対してテレビの場合は30代、40代、しかも男性の率が高いと思っている。そういうユーザーに対して、例えばアニメばかりお勧めしても「見るのをやめた」ということになりかねない。そのため“マイルドな感じ”で編成しており、イメージとしてはおとなしめの動画を“ながら”で流す、といった感じだ。