【ベネッセコーポレーション】
子供の自立学習を支援
継続率が大幅向上
ベネッセコーポレーションで「進研ゼミ小学講座」の責任者を務める成島由美 小学生商品開発部部長は、ある悩みを抱えていた。受講生が小学3年生から4年生に進級する際、親に対してどう訴求すれば通信教育を継続契約してもらえるのか。
4年生からは学習塾に通い始める子供が増える。子供が進んで自宅学習に取り組む環境を作らなければ、顧客離れにつながる。
そこでベネッセは2012年4月から、小学4年生向け講座でデジタル教材「ポケットチャレンジ」の提供を始めた。カラーディスプレー付きの携帯ゲーム機のような形状で、タッチペンを使って操作する(写真1)。
1年分の教材を内蔵
ポケットチャレンジは、国語や算数など主要4教科の1年分の学習コンテンツを、あらかじめ内蔵している。搭載したカメラを利用して、毎月届く紙の教材に印刷されたQRコードを読み込むと、その号に適した学習コンテンツを表示させる仕組みだ。紙の教材で学習した内容を動画で復習できるほか、画面上に漢字や計算式を書いて、繰り返し学べる機能もある。
もう一つの特徴は、学習スケジュールの管理機能だ。あらかじめ設定しておけば、学校のチャイムと同じように、勉強開始の時間をアラームで教えてくれる。親が指示しなくても、子供が一人で勉強を始められる「補助輪」とベネッセは位置づけている。
ベネッセは自らポケットチャレンジの要件を定義し、中国の工場に製造を委託した。製造コストは1台40ドル程度だという。コストを原価に転嫁するため通信講座の料金の値上げに踏み切ったが「3年生から4年生への継続率は、過去最高を記録した。例年の2倍以上の新規会員獲得にも成功した。売り上げと利益の向上に大きく貢献している」と成島部長は笑みを浮かべながら語る。
商品化の前に、1000人以上の小学生に試用してもらったところ、飽きずに毎日勉強を続ける確率が高まったという。「育成ゲームなど、子供心をくすぐる機能を搭載した。ベネッセの代わりに、親に対して“買って”と営業してくれる子供もいた」(成島部長)。
親のニーズと子供の欲求の二つをITで満たすことで、ベネッセはヒット商品を産みだした格好だ。2013年からは5年生向けの講座でも、ポケットチャレンジを利用できるようにする計画だ。