ライフログをはじめ、世の中のあらゆる情報が「ログ」として記録されるようになってきた。本書は、こうした動きを「実世界ログ」と総称。消費者の行動支援や生産性向上、新たな価値創造などに役立てる例を交えながら、現状の課題や将来性について解説している。初心者向け。技術関連の説明は浅くビジネス面の考察も少ないため、同分野に取り組んでいる人には物足りないだろう。

 ただ東京大学アンビエント社会基盤研究会 実世界ログWGのメンバー10人以上(企業を含む)が分担して執筆しているためか、個々の考察は深いように感じた。例えばこれまで人間の記憶の中だけにとどまっていた出来事が、細部まで完全に記録されることによる弊害、「技術には第一の原理と第二の原理がある」という観点からプライバシーの問題を論じたくだりなど、個人的には「なるほど」と感じる部分が結構あった。

実世界ログ

実世界ログ
東京大学アンビエント社会基盤研究会 実世界ログWG著
PHPパブリッシング発行
1365円(税込)