前回の記事で、米国の特にB2Bマーケティングを行う企業にとって、ソーシャルメディアの位置付けが変わってきているという話を書いた。これは別に最近になって起こった動きというわけではなく、比較的以前から考えられていたものである。あえて言うなら、日本でこれまでなかなか、こういった動きがピックアップされていなかっただけと言えるかもしれない。

 日本国内で「ソーシャルメディアマーケティング」を語る際に、「いかに情報が広がったか」、あるいは「どれだけ話題化されたか」といったように、ソーシャルメディアを「自分たちの情報を幅広く伝えていくためのツール」、言い換えれば「マスメディアを代替するもの」として位置付けられていることが依然として少なからずある。ただ、そういったアプローチができるところは非常に限られているし、少なくともB2Bの領域においては困難だろう。仮にできたとしても実際のビジネスに対する影響度となると、また話は別である。

 特にB2Bの場合、ソーシャルでありがちな大規模かつ瞬間的に話題化されるよりも、ターゲットとなる顧客と持続性の高いコミュニケーションを構築し維持していくほうが重要となる。そして、海外の企業の場合、こういったビジネス本来の目的に対してソーシャルメディアを、どう活かすことができるかを考えた上でアプローチをし始めている段階にある、というのが前回述べたことだ。

通常のマーケティング活動をソーシャルでも実行する

 ただ実際、何か凝ったアプローチをしているかというと、決してそうではない。どちらかと言うと、今まで実践してきたマーケティング的なアプローチを、ソーシャルメディア上でも展開していると考えた方がよいだろう。言い換えれば基本に忠実だといえる。

 そのアプローチは、以下のようになる。

  1. ソーシャルメディア上にコンテンツを提供し、フォロワー/ファンを増やす
  2. フォロワー/ファンを細かくセグメント化する
  3. セグメント化したフォロワー/ファンをセールスのパイプラインにつなげる

 「ソーシャルメディア」という括りの中で、こうしたアプローチを考えると非常に複雑になってくるようにも思える。だが実は、これらはマーケティング活動において頻繁に実施していることだ。たとえば自社で何らかのイベントを開催した際に、そこで顧客の情報を収集し、その後細かくセグメント化し、さらに、その顧客をセールスのパイプラインにつなげるといった形で置き換えて考えると、イメージしやすいだろう。

 この例の「自社で何らかのイベントを開催し」という部分は「ブログあるいは企業サイト上で、コンテンツを積極的に提供し」という形になるし、「そこで顧客の情報を収集し」という部分は「ブログのRSSを購読してもらう」あるいは「Twitterアカウントのフォロワー/Facebookページのファンになってもらう」というような形、あるいは「資料やデータをダウンロードで提供できるようにし、その際に情報を収集する」という形になる。

 こうやって、ソーシャルメディア上で集めたデータを、単に「フォロワー/ファン」とひとまとめにするのではなく「細かくセグメント化」するということも、決してできなくはない。たとえば、「記事/ツイートに対する反応」ひとつを考えても「どんな顧客が、どんな記事/ツイートに反応しているのか」を細かく分析していくことで、きちんとセグメント化されるはずだ。さらに、こういった分析を進めていく中で、インフルエンサーを特定していくことも可能になってくるだろう。