OSSが、大手商用ソフトベンダーのクラウド戦略を、大きく変え始めている。マイクロソフトはPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)であるWindows Azure Platformで、OSSミドルウエアのサービス提供やサポートを強化している。仮想化ソフト最大手のヴイエムウェアは、PaaS市場に参入するに当たって、自らパブリッククラウドサービスを提供するだけでなく、PaaSを実現するためのソフトウエアをOSSとして公開した。

 両社がなぜ、クラウド戦略を変えたのか。その狙いを見ていこう。

OSSサポートに走るMS

 マイクロソフトは間もなく、Windows Azure上でHadoopをサービスとして利用可能にする「Apache Hadoop-based Services for Windows Azure」の商用提供を開始する予定だ。2011年12月から、CTP(コミュニティー技術プレビュー)という評価版を提供してきた。

 同サービスでは、ユーザーはWindows Azureの管理ツールで簡単な設定をするだけで、オンデマンドでHadoopを利用できる。ユーザーは仮想マシンにHadoopのソフトをインストールしたり、Hadoopのクラスターの管理をしたりする必要はない。

写真1●マイクロソフトのOSS担当シニアディレクターであるギアヌゴ・ラベリノ氏

 マイクロソフトは、Windows Azureの仮想マシン上で、OSSミドルウエアの動作サポートも行っている。RDBのMySQLのほか、インメモリーキャッシュである「Memcached」、ドキュメント指向DBの「MongoDB」、サーバーサイドJavaScript技術である「Node.js」、ブログサーバーの「WordPress」などである。マイクロソフトはこれらOSSをWindows Azure上で稼働させるために、OSSのソースコードに対する修正なども行っている。

 Windows Azureはもはや、商用ソフトだけが利用できるPaaSではない。「クラウド上でOSSを使いたいという顧客のニーズは非常に高い。ユーザーに選択肢を提供できなければ、プラットフォームで成功はなしえないと考えて、OSSのサポートを強化している」。同社でOSS担当のシニアディレクターを務めるギアヌゴ・ラベリノ氏(写真1)は、こう力説する。ラベリノ氏は、ASFのバイス・プレジデントを務めていたこともある、OSSコミュニティー出身のマイクロソフト社員だ。