海外、特にアメリカではソーシャルメディアが企業のマーケティング活動に組み込まれて久しい。それは決してB2Cだけに限ったことではなく、B2Bの方面においても同様といえるだろう。

 約一年ほど前にアメリカのAberdeen Groupが、北米とヨーロッパを中心に、大企業および中堅企業約500社を対象に実施した調査では、少なくとも84%のB2Bマーケターが何らかの形でソーシャルメディアを活用している。だが、「活用している」と言われている一方で、このソーシャルメディアを活用した活動自体が、自分たちのビジネスに対して何らかの結果をもたらしているかどうかについて、ほとんど人は未だに悩んでいる。

 ある調査では、マーケターは平均して1週間あたり4~6時間をソーシャルメディア関連活動に充てているという。こうした活動がきちんと自分たちのビジネスに対してプラスに作用しているかどうかという点が、海外、特にアメリカの企業では、改めて議論されている。つまり「とりあえずソーシャルメディアを活用し始めた」という、いわば「はじめの一歩」から「次の一歩」を模索するフェーズに入っていると言っていいだろう。

企業情報を多数に伝えるものからリードするツールに

 その「次の一歩」として考えられているのがソーシャルメディア上でつながりを持っている顧客をきちんとデータ化する動きである。Twitterアカウントのフォロワーや、Facebookページのファンをきちんとデータ化した上で、その中から強い影響力を持つ、いわゆる「インフルエンサー」となるユーザーを特定したり、あるいは属性ごとにセグメント化していく。その上でデータを、リードジェネレーション活動やセールスのプロセスに組み込んでいくというものだ。わかりやすく例えると、自分たちが持っている顧客リストに対してセールス関係のメールマガジンを配信するのと同じ位置付けで、ソーシャルメディア上でのコミュニケーションを実行するというものである。

 これだけでは、あまりピンとこないかもしれない。だが、「次の一歩」がこうした方向へ向かうという流れは、実は非常に大きな意味がある。

 それは、企業にとってソーシャルメディアが必ずしも「自分たちの情報を幅広く伝えていくためのツール」、言い換えれば「マスメディアを代替するもの」という位置付けとしてではなく、むしろ(とくにB2B方面においては)顧客との関係性を保ち、その後のリードジェネレーションにつなげていくというようなツールとしての使い方が浸透してきているという点だ。

 実際に、つい1年ほど前までは、海外でも多くの企業が、いかに自分たちのTwitterアカウントのフォロワーやFacebookページのファンを増やすかを最も重要視していた。それらの数字がソーシャルメディアマーケティングを行なっていく際において、最大のKPIとして考えられていた。そのために、フォロワーやファンを増やすためにキャンペーンなど、様々な施策を取っていた。だが、その一方で「では、フォロワーやファンが増えて、自分たちのビジネスの何が変わったのか」という具体的な(ビジネス上の)結果に関して、それが成功だったのか否かという議論がなされてもいた。

ツールの進化でデータを正確に分析した上での対応が可能に

 最近では、ソーシャルメディア上のコミュニケーションをきちんと分析できるようなツールなどが生まれ、かつ進化している。こうしたことにより、企業にとって「ソーシャルメディア」のとらえ方が大きく変化してきたと言っていいだろう。分析するためのインフラが整ったことで、ソーシャルメディア上でつながっている顧客と、その間に生まれているコミュニケーションをより細かく掘り下げ、きちんとしたデータとして企業が管理できるようになってきたわけだ。

 では現在、海外の企業は、どのような形でソーシャルメディア上でつながりを持っている顧客を、自分たちの見込み顧客として、上手くリードジェネレーション活動につなげようとしているのだろう。次回は、そういった動きを、より深く掘り下げた形で考えてみよう。

熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)
リーバイ・ストラウス ジャパン デジタルマーケティングマネージャー
熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)1974年生まれ。プロミュージシャンからエンジニア、プロダクトマネージャー、オンライン媒体編集長などを経て、マイクロソフトに入社。企業サイト運営とソーシャルメディアマーケティング戦略をリードする。その後PR代理店バーソン・マーステラでリードデジタルストラテジストを務め、2011年12月よりリーバイ・ストラウス ジャパンにてデジタルマーケティングマネージャーとなる。