4年に一度のスポーツの祭典「オリンピック」が2012年7月27日~8月12日にロンドンで開催された。世界各国のアスリートが繰り広げる熱戦を間近で観戦できる貴重な体験だった。

 開催に向け、交通インフラの整備はかなり早くから進んでいた。オリンピックでは選手だけでなく、メディアや観客が世界各国から一斉に集まるため、交通インフラの整備は大会の成功を大きく左右する重要なポイントになる。公共交通機関の整備はもちろん、道路には大会関係車両専用のレーンも作られ、期間中の渋滞回避への協力を要請する広告が目立った。

 同じインフラで通信分野に目を向けると、オリンピックの影響は少なからずあった。スマートフォンに代表されるスマートデバイスの普及により、今や誰もが写真や映像を手軽に撮影、配信できるようになった。世界各国から集まった観客が一斉に通信を利用すれば、ネットの閲覧やメールの送受信が遅くなるといった問題が起こる。

オリンピックに沸いたロンドン、データ通信で一部障害も

 実際、今回のオリンピックでも観戦者による通信の急増でデータ通信障害が発生した。大量通信が原因で一部の競技に問題が発生し、国際オリンピック委員会(IOC)が緊急時以外のデータ通信を控えるよう観戦者に要請したとの一部報道もあった。

 通信インフラは人々、社会にとって必要不可欠な存在となってきている。我々もインターネット接続サービスを展開している通信事業者として万全の対策を施している。通信網は完全な冗長構成となっており、特定経路に問題が発生しても代替経路で同等のサービスレベルを維持できるようにしてある。さらにNOC(Network Operation Centre)において24時間365日の監視を行っており、障害の未然防止と早期解決に努めている。大イベントの期間中は監視体制も適宜強化する。

携帯電話料金は月10ポンドから

 最後にロンドンの携帯電話事情を紹介したい。ロンドンでも携帯電話はスマートフォンが大半を占めるが、日本との大きな違いは端末と通信事業者の回線を自由に組み合わせられる点。利用場所(国)や用途に合わせてSIMカードを入れ替えて使えるため、便利で節約に役立つ。実際、筆者の周りには複数のSIMカードを財布に入れて持ち歩いている友人がいる。

 契約方式はプリペイド方式と似た、「Pay as You Go」の人気が高く、料金も月10ポンド(約1250円)からと安い。使用頻度の少ない筆者にはこれで十分だが、足りなければWebや携帯電話で追加チャージできる。公衆無線LANもほとんどの店舗で使えて便利である。一方、おサイフケータイやワンセグといったサービス/機能面の充実度や、細かな点への配慮では、やはり日本が世界一だと感じる。

文岩 基栄(ふみいわ きえい)
KDDIヨーロッパ営業部門マネージャー。日本では携帯電話のコンシューマ向け営業や法人向けソリューション営業などを担当し、2011年5月から現職。現地に進出した日系企業向けの営業を主に担当する。2年目の夏を迎え、ロンドンでの生活にもやっと慣れてきた。日々成長する1歳の娘とゆっくり接することができる週末が楽しみ。