日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が毎年10~11月に実施する企業アンケートで、「クラウドを導入すべき」と考える企業が2011年に初めて50%を超えた(図)。2010年の結果は35.7%であり、多くの企業がクラウドへ急激に移行しようとしている。
JUASのアンケート結果を詳しく見ると、クラウドの分類であるSaaS(サース)、PaaS(パース)、IaaS(イアース)のそれぞれの導入比率は、SaaSが20%、PaaSが8.1%、IaaSが8.4%。これは前回(2010年)のポイントの1.5倍から2.4倍に当たる。インテグレーターの富士ソフトは、「2年半ほど前から先進的な企業がクラウドを導入していたが、ブームはもう一巡した感じだ。2011年後半ぐらいから、“普通の”企業がどんどん導入し始めている」(クラウド統括部クラウドビジネス推進室主任の矢口 広之(やぐち ひろゆき)氏)と話す。
その要因の一つは、東日本大震災だ。矢口氏によれば、「震災を経て、経営者からクラウドを利用した事業継続計画を立てるように言われているシステム担当者が増えているようだ。『とにかくウチの会社でもクラウドを導入したい』と相談にくる」という。インテグレーターのサイオステクノロジーで執行役員を務めるGoogle(グーグル)ビジネス統括の栗原 傑享(くりはら まさたか)氏は、「リーマンショックや東日本大震災で企業のシステム投資は止まっていたが、2011年後半から再開されつつある。その投資先が、クラウドに向かっている」と分析する。
ただ、すべてのシステムがクラウドに向いているわけではない。そこでPart1では、どのシステムがクラウド移行に向いているのかを考える。Part2では、クラウドへの移行事例を紹介する。先行企業は何を、なぜクラウドに移行したのか。移行のポイントとともに紹介しよう。ネットワークやセキュリティなど、重要な点は意外と多い。Part3では、クラウドを導入すると顕在化するネットワーク面や管理面での問題を解消するためのサービスを紹介する。