米グーグルは2012年9月25日、Androidタブレット端末「Nexus 7」を日本で発売した。自社製品の投入でタブレット端末市場の価格破壊を仕掛け、米アップルのiPadからのシェア奪取を狙う。

 Nexus 7はクアッドコアプロセッサ「Tegra 3」を搭載し、価格は1万9800円。同等スペックの他社製品より1万円以上安く、iPadの半額以下だ()。機能面でも独自性を持たせた。画面は主流の10インチではなく、外出先での利用に向く7インチを採用。OSの新版「Android 4.1」も他社に先駆けて搭載した。

表●日本で入手可能な主なタブレット端末(2012年3月以降発売の機種)
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 グーグルは基本的にOSの開発に専念し、ハード製造をメーカーに任せる水平分業型の戦略でAndroidを推進してきた。これに世界中のメーカーが乗り、スマートフォンのOS別出荷シェアではAndroidが世界1位を獲得した。

 この戦略を転換した理由は、タブレット端末市場でAndroidが苦戦していることへの危機感だ。米IDCによれば2011年のタブレット端末出荷台数のOS別シェアで、57.2%をiPadが搭載する「iOS」が占めた。Androidは38.9%だ。2012年通期予測ではそれぞれ60.0%と35.3%で、iOSがリードを広げると予測している。

 Androidの普及はグーグルにとって、主力の情報検索サービスを強化する生命線となる。検索結果などユーザーの情報を集約する窓口の役割を担うからだ。Nexus 7を起爆剤にタブレット端末の低価格化を促し、Android全体のシェアを拡大する考えだ。

 実現に向けて当初から様々な拡販策を打ち出している。9月25日からオンラインストア「Google Play」で発売し、10月2日からはビックカメラやヨドバシカメラなど大手家電量販店も販売を始めた。さらにニフティやビッグローブなどがモバイルルーターやFTTHの新規契約を条件に、Nexus 7の無料提供キャンペーンを実施している。

 「当面はNexus 7が牽引役となり、タブレット端末の相場が下がっていく。他社も対抗せざるを得ない」と、国内外のタブレット端末市場に詳しい岸田重行 情報通信総合研究所主任研究員は話す。2012年10月26日には米マイクロソフト(MS)が、「Windows 8/RT」搭載の自社製タブレット端末「Surface」を発売する。OSを開発する“本家”のタブレット端末が出そろい、アップル、グーグル、MSのシェア争いは激しさを増しそうだ。